第七話***オシバナの仕事
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X791年 フィオーレ地方 オシバナ
クウヤは海を見つめていた。
「……早いな、もう、妖精の尻尾に入って五年か……」
『確かに月日の経つのは早い。もう、己も御前に憑いて五年だ。しかし、な、クウヤ。己は昔を見つめるのもいいが、今を見つめることを疎かにしてはいかんと思うぞ』
「へ?」
『御前は何故、此処に来たか覚えておるか?』
「えーと……」
クウヤは肩に担いでいた荷物を見る。
そして、仕事の時何時も羽織るマントを見て、
「あ!仕事!」
と叫び、駆け出した。
「こんにちは、妖精の尻尾の魔導士、クウヤ・フォーグルです」
クウヤは笑顔で、依頼人に挨拶する。
依頼人は渋い顔で答えた。
「……依頼した、オシバナ町長のヒューロ・オシバナだ。いきなりで悪いが、クウヤ君。仕事内容はわかってるかね?」
「はい」
クウヤは笑顔のまま、依頼書を取り出す。
「森バルカンが、町に出没するんですよね。有志で調査すると、森の奥の洞窟に生息する親玉が興奮、暴れ狂っていて、バルカンが近くに寄れず、離れ、町に押し出された、と」
「ああ。退治しろ、とは言わん。繁殖期だったり、怪我だったりなら悪いしな。何故暴れているかの調査を頼みたい。その後は、此方でなんとかする」
「はい!妖精の尻尾に任せてください」
オシバナ町長と別れ、クウヤは森に来ていた。
正式名称ターザの森。
通称オシバナの森である。
「よし、行くか」
クウヤは森に突入した。
「うわ、また出た……やあっ!」
バタン
オシバナの森には森バルカンが大量に生息している。
クウヤは森バルカンに会う度、睡眠粉末を風で散布し、眠らせるという手をとっていた。
「……はあ、そろそろ無くなるよ、沢山持って来たのに」
ぼやいていると、耳飾りに付いた鍵石がチカチカと点滅しだした。
「……え、神使い?」
鍵石は、他の鍵石が一定範囲内に入ると、共鳴し合い点滅する。
一回以上接触すると、その鍵石を覚え、それを付けている神使いが望まぬ限り反応しない。
点滅しているし、クウヤが望んでいるわけでもないため、接触したことのない神使いが近くに居る、ということである。
「……はあ、神使いか。面倒だわ」
そう呟き、木陰から現れた影は、黒髪をつむじの辺りでお団子にして、鍵石の簪を付けた少女であった。
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