第百八十一話
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第百八十一話 ライゾウの歯は
ライゾウは華奈子に自分の歯を診てもらって虫歯はないとはっきり言われた、だがそれでも気になってだ。
その後でタロにだ、また言ったのだった。
「ご主人の言葉は信じてるけれどさ」
「虫歯はないことは」
「けれど気になるんだよ」
それでもというのだ。
「どうにもな」
「それはどうしてかな」
「何か一旦気になったらな」
それで、というのである。
「おいらそれが中々消えないんだよ」
「ご主人に言われても?」
「そうなんだよ」
こうタロにも話す。
「自分でも変だって思うけれどさ」
「そうなんだね」
「どうしたものかね、これは」
「ううん、難しいね」
「難しいか」
「うん、不安が消えないんだよね」
タロはライゾウにこうも言った。
「ご主人に言われても」
「どうしてもな」
「ああ、そうだよ」
どうしてもと言うライゾウだった、また。
「何かな」
「それはね、もうね」
「もう?」
「忘れるまで待つしかないかな」
「歯のことをかよ」
「そう、それまでね」
こうライゾウに言うのだった。
「それしかないよ」
「ちぇっ、じゃあ暫くはこのままかよ」
「歯のことが気になったままね」
「過ごすしかないんだな」
「とりあえずはね」
ここでこうも言ったタロだった。
「寝たら?」
「寝るのかよ」
「そうしたら歯のことも忘れられるじゃない」
「それはそうだな」
ライゾウはタロの今の言葉には素直に頷いた。
「実際にな」
「そうだよね、じゃあね」
「寝るべきか」
「そうしない?」
タロはライゾウに穏やかな声で言う、そして彼から寝てライゾウもだった。彼に追従する形で実際に寝たのであった。
第百八十一話 完
2014・10・31
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