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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
暗躍鐘楼
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取ったにしては傷も汚れもまるでない。倒して奪ったにしても執着がまるで感じられなかったし、天狗仲間の情報によれば周囲に傷ついた様子の者は椛一人だけだったとされる。
法を破った者に対して大人しく逃がすという選択肢を持たない彼女が、倒した相手をそうするとは考えづらい。
ならば、この外套の持ち主が椛に与えたという答えが一番しっくり来る。
そして、その者は椛を簡単にあしらえる程度の実力者。
「―――これは、面白いことになりそうですね」
文が僅かにほくそ笑む。
特ダネの為ならば身内の恥も惜しげもなく晒す―――それが射命丸文の報道理念。
彼女はエンターテイメントという概念にひどく感銘を受けている。
誰かを楽しませるという行為。それは彼女がこのつまらない世界に見いだした一筋の光明。
その為ならば、たとえ射命丸文という個人が嫌われようとも厭わない。
本来戦闘部員として、その能力を発揮すべき実力を持つ彼女が報道部員などという場所を拠り所にしているのも、それが起因している。
文は、この特ダネが今までとは違う結果に繋がるという確信があった。
今までのようなありきたりで答えを見いだすのが容易だった陳腐な代物ではなく、幻想郷を震撼させるきっかけになる程の大規模なものになると。
報道部員として生きてきた彼女の勘は、こと新聞のネタになる内容に於いてはとても敏感に働く。
自分自身もそれを理解しているからこそ、これ程までに思いを馳せている。
「それにしても、この外套―――」
ふと足を止め、おもむろに羽織る。
明らかに丈もサイズも合わないそれは、当然ながら下部を引きずるような形で収まる。
しかし、そんな不格好な状態にも関わらず、文はどこか満たされた表情をする。
「やはり、この感覚―――。これは一体何なのでしょう」
文は言いようのない安心感に包まれる。
理屈じゃ説明できないような何かを感じつつも、彼女のその後に出る言葉は気楽なものだった。
「これを着て寝たらさぞ良い夢が見られそうですね。いずれ持ち主に返すことになるかもしれませんが、お届け料としてしばらく掛け布団代わりに使わせてもらいましょうか」
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