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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
暗躍鐘楼
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ことは容易だった。
何故か触れているだけで強い抱擁感を覚えるそれは、寝るときに丁度いいななどと関係ないことを考えていたりもしたのは余談だ。

「だからこそ、そんな貴重なものをごく当たり前に持っている人は限られてくる。貴方をここまで運んできた方達がこんなものを持っているとは考えられませんし、ならば貴方に傷を負わせた何者か―――それも、そこらの雑魚ではない、もっと強大な何かの持ち物だと考えた方が自然ですね。ですが、私の知り合いにこんな雄々しい外套を着れる体格の持ち主なんて、鬼の四天王ぐらいしか知りません。もし彼女の持ち物だとすれば、貴方があの時口を噤むことは、天魔様への反逆と見なされてもおかしくない。逆に考えれば、天魔様に対し強い忠誠を誓っている貴方がそうしたということは、相手は彼女じゃない。では一体誰が――――――?」

うんうんと唸りながら憶説を語り続ける。
あと一歩といったところで答えが出せないもどかしさに歯痒さを覚えていると、椛が痺れを切らしたように声を荒らげる。

「もういいだろう、探偵ごっこならば余所でやってくれ。何なら証拠品としてそれを持って行けばいい」

「あや、いいんですか?」

「ふん、むしろ処分に困っていたくらいだ。残飯処理が専売特許の鴉にはもってこいの役目だろう?」

「それもそうですね。では、有り難く頂戴させてもらいますよ」

侮蔑も物ともせず、言われた通りに真紅の外套を回収し、出口に向かう。

「余計なお世話かもしれませんが―――私以外にはその言葉遣い控えた方がいいですよ。大衆の中で生きる私達は、協調性を尊ぶべきなのですから」

それだけを告げ、文は部屋を出る。
周囲に誰もいないことを確認し、張り付いた笑顔を剥ぎ取る。

「………やれやれ、相変わらずですね彼女も」

小さく溜息を吐き、歩き出す。
目指すは自分の部屋。先程の会話のせいもあるが、疲れているので寝てしまおうと考えていた。

「それにしても―――探偵ごっこですか。悪くありませんね」

椛との会話にあった言葉を反芻する。
新聞のネタを探すのは得意とするところだが、そういう方面で知恵を絞ったことはなかった。
椛は明らかにこの外套の持ち主に何かしらの感情を抱いている。
仕事一筋で職務を全うすることを生き甲斐としている彼女にとって、個人に対して深く執着を持つことは稀だった。
過去の異変に於いて退治された時にも、自らの実力不足を嘆くことはあっても、相手に対して復讐だの再戦だのと考えることはなかった。
負けたことを恥と思わない素直な性格な彼女が、敵対したとされる相手を特定しようとして情報を渋るのは明らかに不自然。
それに、この外套は一体何故彼女が持っていたのか。
奪い
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