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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
曇り鏡
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こそ類例があるが、手段があまりにも単純で分かり易い。
なまじ力を持つ国は、戦争による領土拡大に躊躇いを持たない。そして、調子に乗り滅びる。
それが何時になるかまでは定かではないが、妖怪の山浸食問題もいずれ同じ末路を辿るのは目に見えていた。

「―――大丈夫です。私がなんとかしてみせます!」

暗雲立ちこめる雰囲気の中、今まで口を閉ざしていた早苗が奮起して叫ぶ。

「知らなかったかもしれませんが、私は八坂神奈子と洩矢諏訪子の下で風祝をしています。私がお二人に掛け合って、争いにならないようにしてみせます!」

「え、でも………そんなこと出来るのかい?」

にとりの不安を尻目に、早苗は決意した目でにとりを見据える。

「出来るかどうかを考えるよりも、まずはやらないと始まりません。誰だって不必要な争いは避けたいと思っている筈です。だったら、戦いを避ける方法を考えて平和的に解決させるのが一番では?」

―――やはり、早苗は優しい。
だが、その優しさは甘美な毒だ。
快楽の海に身を委ねている間に、知らず自らを破滅へと導く毒。
正しすぎるが故に、高尚すぎるが故に、それは実現しない。
かつて私が夢見た理想と酷似したそれは、結末を身を以て体験した私にとって、決して無視できないものだった。
しかし、否定して理屈を唱えて世界の成り立ちを説明しても、かつての衛宮士郎がそうであったように、納得するとは思えない。

「………まぁ、無駄な争いは避けるに超したことはないのは事実。だが、諏訪子達がそれを良しとしたところで、相手側がそれに応じなければ弱気な姿勢を見せる此方側は迫害されるだけだぞ。それを神という地位に落ち着いているあの二人が甘んじて受け入れる訳がない。それを理解しているのか?」

信仰心を糧とする存在が、自らの地位を貶める行為を認めてしまえば、存在価値が無くなってしまう。
あの二人の行動理念は与り知らぬところだが、存在意義を見失っているということはないと信じたい。

「――――――」

「―――だが、君の考えは決して卑下されるべきものでもない。現実ばかりを見据え理想を語らぬ者は、そこで一生停止したままだ。人間は知能面で進化して初めて人間と呼べる。今の君は、誰よりも人間らしいと言えよう」

「私が人間かどうかなんて、些細な問題です。私ひとりが人間辞めて誰もが笑って暮らせるようになるなら、安いものだと思いますが」

「………効率だけで語るなら、そうだろうな。だが、それは有り得ない|幻想〈ゆめ〉だ。君は人間だ、今までも、そしてこれからもな」

―――なんて白々しい。
事実を知るものからすれば、鼻で笑われること請け合いだ。
何せ、その人間を辞めた存在が目の前にいるばか
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