暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
曇り鏡
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
となる以上、状況に流されるのはごく当たり前のこと。生きるための処世術を否定はできない。
だからこそ、彼女は理想と現実の板挟みで苦悩をしている。
誰とも争いたくないという願い。その高尚さ故に、いつまでも辿り着けない。それどころか、兆しすら見えているかすら怪しい。
高すぎる理想は、いずれ現実に浸食される。
そしてその果てに待つのは、自己の崩壊に他ならない。
………いや、彼女は私とは違い、仲間に頼るという選択肢に躊躇いを持つことはない筈。
自分と同じだと一瞬でも考えてしまったが、勘違いも甚だしい。

「念のために訊くが、そもそも独立することは無理なのか?」

「出来なくはないよ。だけど、社会に身を寄せる間に、良くも悪くも河童の機械技術というのは広く伝わってしまった。もし河童が天狗という抑止力を捨てたという事実が広まれば、結局争いの種は広がってしまう可能性があるんだ」

「それを理解した上で、天狗は河童が反抗できない理由を盾にし、支配しているという訳か」

やはり社会の裏側というものは、いつだって狡猾なやり口で蔓延っている。
それが常套手段であり、最も効率の良いやり方だというのだから質が悪い。

「暗黙の了解って奴さ。………一応、両方解決する方法として、私達が機械技術を捨てるという決断もある。妖怪として―――いや、河童としての優位性ははっきり言ってそれだけである以上、それを捨ててまで私達に興味を持つ存在は確実に減るだろうね。それでも結局、身を守る手段を失った私達の末路なんて、想像に難くないんだけど」


「………ひとつ訊くが、妖怪の山に住む妖怪の総てが社会に身を寄せているという訳ではないのか?価値の無くなった存在に干渉する手合いがいるかのように聞こえるぞ」

「違うよ。天狗社会の中に入る条件は、確固たる優位性を持つ種族であり、それが役に立つかどうか。悪く言えば、エリートだけをかき集めてそれ以外を排斥した集団がそれだ」

「成る程な、つまり君達河童がエリート集団であったという事実から、もしそこからあぶれてしまった時、外部の妖怪の妬みや僻みによる暴力が蔓延すると」

「物分かりが良くて助かるよ」

にとりの話を訊いて、妖怪の山の社会とやらの真実が少しだけだが見えてきた。
社会という言葉からあたかも近寄りがたい雰囲気を出し、凄そうなように見せかけてはいるが、結局のところ弱肉強食の延長でしかない。
強くなければ眼鏡に掛けられず、弱者はその他大勢と認識され、自分達は上位存在だとふんぞり返る。
律する手段が姑息で狡猾なのはどこでも代わらないが、唯一違うところは圧倒的暴力による強制も選択肢に入っているということ。
自らの力を見せつけ、裏切りや抵抗の意思を根こそぎ奪い取る。目的
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ