第二十九話 旅のはじまりその十一
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「だから京都でもね」
「そんな鱧はか」
「食べないから」
「だよな、まあ鱧食わなくても死なないか」
「高い鱧でなくてもね」
裕香はこう薊に返した。
「別にね」
「何ともないよな」
「普通の鱧で充分よ」
裕香は鱧自体にはこだわりを見せるがそれでもだった、京都の料亭で出る様な鱧には興味を見せずにこう言うのだった。
そしてだ、一行は和歌山に電車で向かっていく。しかし。
ここでだ、急にだった。
薊達、裕香以外の六人の目の色が変わった。そしてだった。
薊は席を立ってだ、今自分達がいる車両の中を見回してからこう言った。
「タイミング見計らってたな」
「そうよ」
中年の男の声だった、だが。
その口調は女のそれに近い。その声で薊に応えたのである。
「丁渡ね、あんた達以外に誰もいなくなる時をね」
「今も姿を見せる気はないんだな」
「あんた達以外にはね」
「戦う相手以外にはかよ」
「獲物以外にはね」
にやりと笑った言葉だった。
「あたしの姿を見せる気はないわよ」
「獲物ね、じゃあ返り討ちにしてやるよ」
「気をつけて薊ちゃん」
鋭い目でだ、菊が言って来た。
「気配はこの車両の中にあるけれど」
「それでもだよな」
「何処にいるのかは見えていないわ」
「ああ、車両の中ってな」
薊はここで車両の中、今自分達がいる場所を見回した。椅子が多くそれを見て言うのだった。
「案外隠れる場所が多いな」
「こうした場所はね」
「七人用の席が左右に並んでるやつだと見渡しやすいんだけれどな」
しかし今いる車両は四人用の席、向かい合ったそれが左右にある。この配置の車両はというと。
「これじゃあな」
「隠れやすいわよね」
「案外な」
「しかもね」
菖蒲も言って来た。
「怪人によっては身体の色を変えられるわ」
「カメレオンみたいにな」
「そうした怪人もいるから」
「だよな、何処にいるのやら」
「おほほ、あたしが何処にいるかわかるかしら」
怪人も笑う様に言って来た。
「最初の相手は赤い髪のあんたみたいだけれどね」
「最初で最後の相手だよ」
薊は右手に棒、七節棍を出しつつこう返した。
「あたしがな」
「あたしを倒すっていうのね」
「そうさ、さて何処にいるかだよな」
こう言ってだ、そしてだった。
薊は通路に出て構えた、棒を両手で持ち。
そのうえで怪人を探す、残る五人も席を立っていないが何時でも戦える様に身構えてそのうえで非戦闘員である裕香を守っている。
その中でだ、薊は気配を探し続けた。しかし。
怪人の姿は見えないままだ、気配は確かに感じる。凄まじい殺気を。
だが姿は見えない、薊はこのことにだった。
眉を厳しいものにさせたままだ、構えを取ったままで言っ
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