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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
他が為に生きる者達
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ああ、やってて良かったと思えるから、割合としてはチャラだよ」

そう答える女性の表情は、どこか晴れ晴れとしている。
心の底からそう思えているからこその表情。自分のしてきたことが報われているからこそ、笑顔でいられる。
その在り方が、酷く羨ましい。

「辛いとか、投げ出したいと思ったことは?」

「それはない、が―――教師として生きるということは、終わりのない迷路を歩くようなものだ。何度も迷い、同じミスをして自己嫌悪して、やっとのことで一歩先へ進めたかと思えば、それでも自分が理想とする教師像に近づくことは出来ないまま―――そんな毎日を送っていると、時たま思うことがあるんだ。果たして自分のしてきたことに意味はあるのだろうか≠ニ」

女性は自嘲するように肩をすくめる。

「例え自覚しているつもりでも、求めている答えにたどり着けないもどかしさは、自然と悔しさや憤りへと変換されていく。ヒトの業であることは周知しているつもりだが、理解していれば対策できるという代物でもなし、本当に嫌になる」

―――似ていると思った。
彼女の抱えている負の感情は、かつて私が経験したそれと同じ根底から生まれたもの。
果てのない理想を描こうと必死にもがき、いつしか自分の行動に疑問を持つようになる。
見いだす答えは違えど、彼女の闇は間違いなく私と同じ人種だ。
唯一違うところがあるとすれば―――彼女はまだ、壊れてはいないということ。
だが、それもいつまで持つか。
教師としての面子もあるのか、悩みを誰かに打ち明けられずに段々と負担となっていったのだろう。そうでなければ、こんな赤の他人に自分の恥と呼べるべき部分を語る筈がない。

「………すまない。初対面の相手に愚痴る真似をしてしまった。普段はこんなことないのだがな、お前を―――いや、貴方を見ていると何故か自然と口が動いてしまったんだ」

彼女も無意識の内に私に―――いや、私の抱える闇に惹かれていたのかもしれない。
だから今まで抱えてきた悩みを打ち明けてしまった。どちらの事情も知っている身としては、そうとしか思えない程の偶然だ。

「いや、構わない。それと………あまり気負いすぎるな。口が悪くなってしまうが、誰も君に君自身が考える以上の期待はしていない。独りよがりな理想を持つのは勝手だが、子供達は等身大の君に惹かれているからこそ、結果として慕われているのだ。理想を目指すなとは言わない、だがペース配分を無視してまで成すことではないさ。生真面目さが仇となり、生徒に心配はかけさせたくないだろう?ましてや君ぐらいしか教鞭を振るう者がいないのならば、尚更だ」

そう、誰も自分に期待などしていない。
結果が出れば御の字。そうでなければ無関心あるいは罵倒。社会の周り方
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