魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり2
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、伝えたい想いがある
6
「ダメ! そんなの無茶だよ!」
ジュエルシードを強引に封印しようとするあの子に向かって叫ぶ。彼女が封印しようとしているジュエルシードは暴走している訳ではない。今も彼女のお母さんが使っているのだ。そんな状態では封印なんてできる訳がない。それくらいの事は、素人の私にも分かっていた。きっと、あの子の方がよく分かっているはずだ。それがどれほど危険な事なのかを。それでもやらずにはいられないのだ。けれど、それでも。
「ごめんなさい!」
誰に向けてとも分からないまま叫び、レイジングハートを構える。プレシアを止められれば、世界とあの子を救う事だけは出来るはずだ。それ以上の事を考え、迷ってしまう前に魔法を解き放つ。確かに身体は疲れている。もう魔力も少ない。けれど、迷ってはいないはずだった。だから、それは今の私に撃てる最高の魔法だった。それでも、
「そんな――ッ!」
プレシアに届く遥か手前で、その閃光は歪んで霧散していく。彼女が何かしたようには思えなかった。多分、ジュエルシードから溢れ出る魔力が私の魔力をかき消してしまったのだろう。それほどの暴走を、あの子は一人で抑え込もうとしている。その結末がどうなるのか、嫌でも分かってしまう。でも、どうすればいいのか。
(このままじゃ――)
誰も、何も助けられない。今までしてきた事全てが無駄になる瞬間を前に胸を貫かれる様な、身体の全てを押し潰される様な――そんな、重く暗い衝撃を覚える。その衝撃に名前をつけてしまう前に、誰かが言った。
≪目を逸らすな≫
叫んだ訳ではない。けれど、力強い声だった。
≪オマエの願いは間違っちゃいない。だから、簡単に諦めるな≫
(諦めたくなんてない。でも、私にはもう――!)
泣いてしまいそうだった。泣きだしそうだった。悔しくて悔しくて涙も出ない。何で、何で私はこんなに弱いの?
≪バカ言うな。オマエの想いがここまで希望を繋いできたんだ。だから、まだ世界は終わらない。何も終わったりはしない≫
私が何を繋いだの?――結局私はずっと光の背中を追っていただけだ。追いつく事も出来ない。私だけじゃ何もできない。
≪オイオイ、忘れちまったのか?≫
その誰かはにやりと笑った。その笑みに応えるように、リブロムから――そのページの隙間から光が零れ出る。
『やれやれ。ようやく真打ち登場だぜ』
リブロムが大きく開く。その光の中から、最初に浮かび上がったのは八つの宝石だった。青白く柔らかな輝きを放つジュエルシード。それからこぼれ出す光は、引き裂かれそうなあの子を――そして世界を静かに包み込む。その光の中で、あの子の身体から力が抜けるのが分かった。慌てて傍まで飛ぶ。
「しっかりして!」
「私は大丈夫……。それより、母さん達は?」
抱きしめ呼びかけ
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