魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり2
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らになって気づいた。だが、
『ハッ! 急に何を言い出すかと思ったら、下らねえ。そんじゃあ、今から名前を変えてみるか?』
本人は全く気にした様子も無く、笑って見せた。
別の名前。そんなものは思いつかない。
『名前を替えたら、オレがオレ以外の何かになるとでも思ったか? オレはオマエの生涯の相棒だ。オマエが何と呼ばれるようになろうが、オレが何て呼ばれようが、そんな事は変わらねえ。ただそれだけだ。オレが紛い物かどうかなんて、関係あるかよ』
それもそうか。自分とこの魔術書が相棒である事は変わらない。今さらお互いに何と言う名前で呼び合おうが、その程度の事で揺らぎはしない。
『それに、多分オマエが思ってるよりオレはこの名前が気に入ってるんだぜ?』
「そうか。そいつは良かった」
再び意識が衝動に飲まれ始める。この状態が続けば堕ちるのは時間の問題だろう。
世界の終わりを目前に、お互いに笑いあう。ここから先、少しでも何かが狂えば、自分は世界を滅ぼす不老不死の怪物に成り下がるだろう。だが、その脅威は――考えてみれば、『世界を変えた』あの日からずっと共にあったものだ。
今さらになって特別視するような事ではない。
『おうよ。……つーわけで、これからも末長く頼むぜ、相棒』
「ああ。お前もな、リブロム」
いつも通り――遥か昔から、今に至るまで変わぬ軽口を叩き合ってから、再び自分は衝動に飲み込まれた。
2
『やれやれ。なかなか身持ちが固てえな。まだ直接お相手はしてくれねえらしい』
「……そのようだな。貞淑なのはいいことじゃないか」
相変わらずの軽口に対して、ため息交じりに頷く。ここまでくれば、いっそふてぶてしさが羨ましい。
『違いねえな。ヒャハハハハハハハッ!』
というより、柄にもなく軽口に付き合った理由として、それにあやかりたいという思いがあった。世界の終わりなんてものを目前にすれば、さすがにそんな気分にもなる。
「この子たちは?」
「侵入者排除用の自動機械。小型はそこまで強力じゃないけど、大型になると装甲も固くなるから、突破するにしても簡単にはいかない」
高町なのはの声に、フェイト・テスタロッサが応じる。御神光に聞かれでもすれば、また余計に機嫌を損ねるだろうが……正直に言って、この二人が突入戦に参加してくれるのは非常に助かる。
(数は多い上に時間はないからな)
無論、目の前の機械人形程度に時間をかける気などない――のだが、だとしても根本的に時間がなかった。エイミィの予測では世界の終わりまでおよそ三〇分。御神光の限界は分からないが、彼を蝕む『魔物』を鎮められたとしても世界が滅んでいては意味がない。結局のところ、世界が終わるまであと三〇分しかない訳だ。
(三〇分もある、と言えるだけの気概があればいいんだが…
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