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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり2
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「目を開けてくれ。リブロム」
 それが、自らの血肉を――魂の欠片すら練り込んで作り上げたその魔術書に初めてかけた言葉だった。そして、その時、その瞬間からその魔術書の名はリブロムと――偽典リブロムとなったのだ。
 だが、その魔術書に恩師の名をつけようと初めから考えていた訳ではない。……いや、無意識のうちには考えていたのだろう。その魔術書の作成に着手したのがいつだったのか、明確には覚えていないが……永遠に囚われると言う事の意味を思い知った頃だったのは間違いない。限りなく絶望に近い孤独の中で、思い描いたのは――自分にとっての始まりであったあの魔術書……リブロムの姿だった。あの絶望の中でも、彼がいたから乗り越えられた。それを思えば、この魔術書が『彼』の姿となっていったのは、むしろ必然だったのだろう。永遠という名の檻の中で、自分はただ一つの希望を欲していたのだ。口が悪くて陽気な――そして、クソ真面目なあの魔術書を。
 だが、自分が生み出したその魔術書はリブロムではない。当然だ。リブロムは――ジェフリー・リブロムはもうこの世にはいないのだから。
 世界は変わった。彼らの名前は忘れ去られ、彼らの残した言葉が僅かに伝わるのみ。アヴァロンもサンクチュアリもグリムも、それぞれが在り方を変えている。魔法使い達の生き方そのものもだ。国が生まれ、割れ、飲み込まれ、滅び、また生まれる。時には、魔物に蹂躙される事もある。その都度、文明は衰退する。
 だがそれは、永遠に繰り返されてきた神話ではない。人の歴史が魔物や魔法に翻弄される事はあっても――それはもう、閉ざされた永遠の中で繰り返されるものではない。名もなき人と呪われた魔法使いが演じる終らない悪夢ではない。彼らの生きた証は確実に積み上げられ、未来への道筋となる。今までも、きっとこれからも。……『楔』である自分が『奴ら』に負けない限りは。
 もっとも、何人もの名もなき人が――彼ら彼女らがこの世界に刻み遺した意思が自分を支えている限り、敗北は許されまい。何せジェフリー・リブロムとその相棒達の加護もあるのだから。これで負けたら、彼らに申し訳が立たない。
 だが……いや、だからこそというべきか。どれほど姿形を似せたところで――やはり自分が生み出したその魔術書はあの『リブロム』ではないのだ。だからこそ、それの名は『偽典』リブロムだった。
 その魔術書が本当の意味で生まれてから数百年の年月の間、ずっとそう呼んできた。
 だが、今になって思う。
「我ながら、酷い名前をつけたな」
『ああん?』
 記述と記述の狭間で――束の間戻った正気の中で、思わず呟いた。
「今さらだが……偽りなんて、酷い名前だと思ってな。お前はお前でしかないってのに」
 この魔術書は――大切な相棒は、偽りの存在ではない。そんな当たり前の事に、今さ
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