第1章 群像のフーガ 2022/11
1話 巡り逢う黒
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――――第一層、迷宮区前。
亜人型モンスター《ルインコボルド・ブラッドリッカー》の握る巨大で粗削りな棍棒が振り下ろされるのを、片手剣二連撃技《クロスライズ》で迎え撃つ。逆袈裟に斬り上げるこのソードスキルのモーションは、振り下ろす動作に対して威力を相殺するよう作用する。もっとも、筋力ステータスで上回る相手に対しては押し勝ったり、完全な相殺というものは望めない。抑えられていながらもしっかりと、しかも一方的にダメージは受けているのだが、こちらの泣き寝入りで済ませるつもりはない。
ベータテストの頃、レベルの高いダンジョンに潜った際にモンスターからのクリーンヒットを回避するべく我武者羅に放ったソードスキルが起こした奇跡は、その《遊びだったSAO》の頃に試行錯誤し、今では死線を掻い潜る為の立派な技術として昇華された。《剣技克破》と、個人的に呼んでいる。本来ならばただの受け流し防御である《パリイ》でも用は足りることもあるのだが、こちらは相手にも反動を課して動きを封じ、反撃を防げる上に、二連撃以上のソードスキルの二撃目以降も強引にスキルアシストに乗って行使するで追撃を行えるというメリットを持つ。とはいえ、こういった変則的なソードスキルの連続使用は精神的な過負荷が掛かるため、長期戦が予想される場合にはここぞというときに限って利用するように心がけている。
ソードスキルの初撃で棍棒をかち上げられ、二撃目で隙だらけの懐を深々と斬りつけられたコボルドは二本あったHPバーをようやく数ドット残すまでに減らし、挙句に悲痛な絶叫を挙げながら懐が無防備になる。自身の筋力ステータスながらナイスファイトだ。もっとも、中ボス程度の相手ということもあり、どうあがいても敏捷ステータスの高いコボルドの方が復帰は早い。ソロならばこの選択は完全に詰み――――ベータテスト当時は一撃離脱を繰り返してチマチマ攻めていた――――なのだが、今回は切り札が控えているので心配ない。
「ヒヨリ、止めだ!」
「うん!」
合図の頃には既に俺を圧巻の速度で横切ったヒヨリはコボルドの懐に潜り込み、返事もそこそこに細剣の基本技《リニアー》を放つ。一人が生み出したモンスターの硬直時間の間に、もう一人がスキルを着実に打ち込むテクニック。《スイッチ》である。
ソードスキルのアシストで加速した細剣の切っ先は純白の光を纏いながら、さながら吸い込まれるように弱点である左胸を貫く。HPの残りを削られた大柄なコボルドは物言わぬポリゴン片となって宙に散っていった。
はじまりの街を出てすぐに向かった隠しダンジョンで手に入れたドロップ品の細剣《フロウメイ
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