第1章 群像のフーガ 2022/11
1話 巡り逢う黒
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デン》がヒヨリのステータスを確かに強化してくれている。それを抜きにしても、戦闘の流れの把握やソードスキルの熟練度も目を見張る速度で上達している。
……《スイッチ》の練習を始めた当初、《剣技相殺》の技後硬直中にモンスターもろとも背後から《リニアー》で串刺しにされた時は全てを諦めたが、それから比べるのもおこがましいほどの成長である。本当に頼もしい戦いぶりだった。
………と、ヒヨリの成長に感心しながらも、目的のアイテムの回収に意識を向ける事にした。ここに来たのは、このクエストの報酬である装備を目的としていたためである。
クエスト名《狗人族への復讐》
第一層迷宮区に最も近い谷あいの街《トールバーナ》のとある空き家で、住人が遺した日記を見ると開始されるNPC以外から受けるクエストである。普通に出向いても日記があるわけでなく、トールバーナの外縁に佇む、小石を積んで作られた塚にある指輪を持ってきて、そこから三分間空き家の中で待機することで、何もない、誰もいないはずの空き家の床にドサッと音を立てて出現するのだ。プレイヤーの死角に落ちるのがいやらしい。
日記の内容はコボルドに家族を惨殺された一家の大黒柱の悲痛な心の内が記され、やがて彼は憎悪を燃やしながら、一匹でも多くのコボルドを狩るべく街を後にするというものである。
旅立つ前日から先は日記が途切れて――というより、日記の後半は文章といっていいのかすら危うい単語の羅列と繰り返しだったため意味も不明な点が多いので――読めないが、日記の一説に記された規定数49匹のコボルドを狩って再び日記に目を通すと、なにやら赤黒くておどろおどろしい文字で………
『仲 間ノ 血 二誘 キ出 サ レテ 、ア イツ ガ来ル。 禾ム カ ラ 全 テヲ 奪 ッタ アイツ ガ 憎イ憎イ憎イ(省略)憎イ憎イ憎イ』
……という、いかにもな文章が追加され、日記が勝手に持物に入ってくる。もうこの時点でいい加減にしてほしいところだが、このアイテムを捨ててしまうとクエストも破棄されてしまうのでぐっと堪える。
そして、この条件が揃ったところで深夜零時の迷宮区前で討伐対象である《ルインコボルド・ブラッドリッカー》を撃破すると日記のそれまでの記述はすべて白紙になり、代わりに最後のページに………
『ありがとう』
……と一言記され、その一文を確認することで日記は光る粒子となって夜空に散り、報酬であるロングコート型の防具《コート・オブ・アヴェンジャー》に姿を変えるのである。
所々に金属の補強がある外見通りの防御力もさることながら、与ダメージに微量ながらHP吸収効果が付
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