さよなら
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ドサリ、と意識を手放したシャロンが落ちる。そこからある程度の距離を置いた場所に翼を畳んだティアが舞い降り、その背中から翼が溶けるように消えた。
―――――それと同時に、糸が切れた操り人形のようにくらりと倒れ込む。
「!ティア!」
慌てて支えると、だらりと両腕から力を抜いたティアが大きく溜息をつくのが聞こえた。
うあー…と小さく呻く声と共に全身の力を抜いた体躯が押すように寄りかかってきた事に驚きながら顔を見れば、怪訝そうな表情と目が合う。
「ぅー……魔力使い過ぎたわ…気怠いし動く気失せるし…面倒だからアンタこのまま私を運びなさい」
「はあ!?自分で歩けよ!」
「だから歩く力もないんだって……意識保ってるだけまだマシでしょうが。ほら、早く帰るわよ。さっさとして」
「いつもに増して偉そうだなオイ!」
じとりと睨むような目に女王気質な喋り方はいつも通りで、どこか安堵する。きっとこれがクロスかヴィーテルシアなら文句1つ言わず運ぶのだろうが、日頃口喧嘩相手のナツからすれば文句の1つや2つどころか5つくらいは言いたくなるもので。
いつものように言葉を返せば、ティアは小さく舌打ちをしてよろよろと立ち上がる。
「何だ、立てるんじゃねえか」
「平然と言うけどこれが限界。意識保ったままギルドまで帰るのはまず無理ね。ま、その時は適当にクロス辺りを頼るけど……いや、アイツも疲れてるだろうし止めた方がいいか…」
その心配は必要ない―――――とツッコむのは敢えて止めておいた。
24時間365日、天気がよかろうが悪かろうがたとえ空からドラゴンが降って来るなんて異常現象が起きたとしてもあの底無しのシスコンは絶賛営業中だ。姉に頼られたらどうなるか、なんて簡単に想像出来る。きっと、“怪我?何だそれ”というくらいになるのだろう。どれだけ見た目が傷を負っていようと、そんな事姉に頼られたシスコンには関係ないのである。何よりも姉、安全第一ならぬ姉第一。
だからきっとティアが何かを言うよりも早くクロスが過保護なまでに心配して、どんな方法を使ってでも支えて帰るだろう。
まあ弟がシスコンだという自覚がないのがティアで、今のところそれで上手く回っているから敢えて何か言う必要はない。
「でも、これでとにかく終わりだね!」
「ばーさんも気ィ失ってるし…ここまでやられりゃ諦めるだろ」
ルーシィの手を借りて立ち上がったルーにグレイが頷く。ひょいっとティアは肩を竦めて見せた。その顔には「ま、大丈夫でしょ」と書かれているようで、少し驚いた。
あまり感情や思考を顔に出さないタイプのティアにしては、思っている事がハッキリと顔に出ている。無意識か、少し緩められた口元がその証拠だ。
「…何よ、人の顔見てニヤニヤして」
「別に何でもねえよ。な、ハッピ
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