さよなら
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頃の君なら、出来る出来ないの前にやろうとすら考えなかったはずだよ』
目を伏せる。
知らないうちに変わっていくのは当然の事だけど、それがどこか寂しかった。ずっと一緒にいて、ずっと引っ張っていけるものだと思っていたから、尚更。
今の彼女には頼る事の出来る相手がいる。支えてくれる兄弟がいて、隣を歩いてくれる相棒がいて、真っ直ぐに言いたい事を言い合える友達がいて、伸ばした手を掴んでくれる仲間がいる。
それはイオリが生きていた頃から大した違いはないけれど、ティアはイオリが消えてからそれに気付いた。イオリがいる時には、気づかなかった。
それを考えると、まるで。
(あたしが、邪魔だったみたい)
こんなネガティブ思考が似合わないのは解っている。口に出せば、きっとこの弟子は盛大に溜息をつくだろう。
けれど、そういう事なんじゃないか、なんて考えてしまう馬鹿な自分がいて。
沈黙に訝しげな表情をし始めた仲間達を笑わせようと、イオリは顔を上げた。慣れたように、作った笑みを浮かべる。
――――――けれど。
「……作ってまで、笑わないでよ」
あの子の鋭い聡明な、人の悪意だけを見て育った目は、どうやったって誤魔化せないのだ。
ティアは、イオリの笑った顔が嫌いだった。
それが心の底からの笑みならまだ好める。が、今のような―――作っていると解ってしまうような笑みは、大嫌いだった。
昔から人の作ったような表情だけを見て、それに囲まれてきたティアだから解る事。特にこうやって、感情がそのまま顔に出るタイプの人だと尚更解りやすい。
イオリもそのタイプで、昔からそんな笑った顔が嫌いで仕方なかった。
「そんな事されてまで、笑ってほしくない」
ティアは知っていた。
イオリが自分の前で明るく笑うのは、ティアが少しでも人を信じられるように。この手を取るのは、全てを諦めたティアを励ます為に。明るく振る舞うのは、暗い事を考えなくて済むように。
いつだって自分の事を考えてくれていたイオリに、ずっと言えなかった事。
私の為にと思って行動してくれてるのを傷つけるから、なんて不器用な思考で言うのを諦めていた言葉。
「言いたい事言って、やりたいようにやってよ。自分の事隠してまで、人を優先しないでよ」
ああ、きっとこれはイオリを傷つけているんだろうな、なんて。
そんな考えがゆっくりと、それを知らしめるように脳裏を過っていく。人の事を考えるのが彼女の優しさなのに、それを真っ向から否定するような事を言うなんて馬鹿げてる。彼女ほど、誰かを優先に考える事さえ出来やしないのに。
けれど、今ここで伝えなければきっと終わってしまうから。
「それがアンタの優しさだから、それを根本から否定してるのは解ってる。今、す
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