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Element Magic Trinity
さよなら
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緒にいられない事を謝罪した。それは覚えている。
だが、その重傷の原因が何だったかを全く覚えていない。思い出そうとしても、解らない。

その後も曖昧で、気づいたらイオリは“幽霊”なる存在になっていた。と、いってもそれに気付いたのは死んでから2年―――――つまり今年になるまで気づいておらず、どうにか「あたしは幽霊らしい」と気づいたイオリの最初の行動は、ギルドに行く事だった。
皆がどうしているか気になった。あの無愛想で不器用な弟子がどうなっているか、この目で確かめたかったのだ。

結果、ティアは随分と変わっていた。
乗り気ではないものの、団体行動をするようになって。ほぼ初対面に近いような相手を、拒む事なく相棒として見て。1人でいる事よりも誰かといる事の方が多くなって。苛立ちや毒を吐きながらも、誰かをこっそり気遣えるようになっていて。
そんな弟子の変化を生きて見たかった、なんて思いながら、イオリはずっとティアを見守り続けた。

―――――そして、今回の件である。
正直、怒った。クロスの怒りさえ凌駕するであろう程には、激怒した。
薄々感づいていたティアの過去は想像より壮絶で、それでも尚ティアを利用しようとするあの女が誰より憎たらしかった。もしイオリが生きていたのなら、どんな手を使ってでもシャロンを排除しただろう。
けれど、イオリにはどうする事も出来なかった。触れる事も出来ない相手には魔法の1つも当てられなくて、傷付く仲間達を見ている事しか出来ないのが何より歯がゆかった。

そんな時の、あの竜の声。【妾の巫女をそこまでに想うのなら、力を貸してやろう】という、イオリが全てを犠牲にするとしてでも待っていた言葉。
迷う事なく頷いたイオリは、自身の魔法を以てティアに全魔力を捧げた。今自分がやるべき事は彼女の代わりにシャロンを倒す事ではないと思ったから、最後の全てをティアに任せた。

そして―――――今に至る。







『……という訳でね、皆に会いたいなーって思ったら“その程度なら容易い”ってあの、えーっと…何とかって竜がどうにかしてくれたんだよ!』
「何とか、じゃなくてシュテルロギアです」
『あ、そうそうそれそれ!』

冷静にツッコんだティアに、イオリはパンと手を叩く。
2年ぶりに師匠に会ったはずなのに、不思議と涙は出て来なかった。それはこの人の明るい雰囲気がそうさせているのかもしれないし、本来泣くはずの所でイオリがマシンガントークを始めてしまい、泣くに泣けなくなったからかもしれない。

「イ…イオリぃー!」
『わあ、ルー君!って何で泣いてんの!?ほら、笑って笑って!』
「笑えないよう!だって…だって嬉しいんだもん〜!」
『うっわあ!本気で泣き出しちゃった、どうしよアルカ君!?』
「この状況で泣くな
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