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Element Magic Trinity
さよなら
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――――そんな事を頭の片隅で考えながら、イオリはティアを見つめた。

「……ふざけないで」

が、その小さな唇から零れた言葉は、怒りよりも寂しさに似た何かを強く感じさせた。








何を言ってるんだ、この人は。
イオリの言葉を聞き終えたティアが思ったのは、それだけだった。同時に湧き上がる怒りと、どこから生み出されるのか解らない悲しさ。その全てを集めて、声に乗せる。

「何が師匠失格よ。私の事何も知らないのに、そんな事言わないでよ!」

言ってる事が滅茶苦茶だ。お得意の冷静で現実的な毒舌は、今は全く使い物にならない。
きょとんとするイオリの顔を睨むように見つめて、ティアは吼えるように続ける。

「私がアンタにどれだけ支えられたか、知らないのに。アンタにどれだけ感謝してたかも気づいてないでしょうに。なのに、何で師匠失格だなんて言うの?」

声が震える。零れる涙を拭う余裕なんて、今のティアにはなかった。ただ言いたい事を言う事しか、頭にはない。
泣き崩れてしまいそうな衝動を必死に堪えて、言わなければいけないと半ば強制的に命令する。

「アンタ以上の師匠なんて、私は知らないんだ!やめてよ、そんな事言わないでよ!」

もう逃げない。伝えられずに過去を悔やんだあの頃を忘れた事なんて、1度もない。
無駄に大人びていた在りし日の自分を今と重ね、後ろにナツ達がいる事なんてお構いなしに叫ぶ。

「否定なんか、させやしない」

歩み寄ろうとしてくれていたイオリを突っぱねて、いなくなってから彼女の存在の大きさを知るなんて、本当に遅い。悪いのはティアだ。向けられる全てを悪意だと思い込んでいた、あの頃の馬鹿な自分。
けれど、今は違う。今悪いのは、誰が何と言おうとイオリだ。
失格だなんて認めない。それを言うのが本人だとしても、そんな事を言われて黙ってなんていられない。

「私の師匠を失格だなんて言う奴は、その言い分を私が否定してやる!」









『本当に、変わっちゃったね』

零れた言葉に、ティアが顔を上げた。頬を濡らす涙を拭おうと手を伸ばして、触れられない事に気づく。先ほどまでは手を取る事が出来たはずの自分の手を見つめて、イオリは微笑んだ。
もう、終わりだ。皆とも、お別れだ。そう告げるように消えていく手を、隠すように後ろに回す。

『でもね、ティアちゃん。その変化を恐れなくていいんだよ?君は君が変わる事を恐れて距離を取っていたけど、大丈夫。どんなに変わったって、君はあたしの弟子のティアちゃんでしかないんだから』

足が消えていく。ハッとしたように目を見開いたティアが何か言おうと口を開くが、イオリはそれに対して首を横に振った。
ティアの肩越しに見る仲間達もそれに気
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