第二部 文化祭
第57話
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
まりあの演奏に続いて、ユイの出番が終わった。
明日奈はしっかりとユイを抱き止めて、肩をぽんぽん優しく叩く。次いで、恋人である和人をぎりっと音がしそうなくらいに睨みつけた。
「……キリトくん、なんで歌わなかったの?」
「うっ……」
「いくら歌いたくないからって……罰として、この部分は全てキリトくんに歌ってもらいますからね」
まりあを覗いた全員で歌うために作られた歌、?Sing All Overtures?の楽譜の一部をとんとんと指先で突きながら明日奈は言った。
「そ、そりゃないだろ……確かに俺が悪かったけどさ……」
「まーりちゃん、ここの歌詞をさっとキリトくんらしく書き換えることってできるかなあ?」
「あ、アスナ……はい、できますよ。そのくらいなら朝飯前です」
「さっすがまりちゃんだね! 楽しみだなあ、キリトくんのソロパート」
明日奈は嬉しさ全開でぱんっと手を打った。実は本当に書き換えてもらうというのは無謀だと思っていたのだが、頼んでみれば案外なんとかなるものである。
「まりあ、お願いだから書き換えストップ!」
「何言ってるんですか、キリト。出番のないはずだった私を、自分の代わりに舞台に出したのは貴方じゃないですか。ただでは返せませんよー」
「うあ、勘弁。この通り」
「知りませーん。はい、書き換え終わったので今から覚えてくださいね」
まりあは書き直した歌詞の書かれた羊皮紙で和人の頭をぺしっと叩くと、くす、と微笑んだ。
明日奈達のグループの、最後の演目が幕を開けた。
──いつかきっと、新しい旅へ続く。
最後の部分を、そっと優しく、明日奈は和人と2人で歌い上げた。
和人のソロパートは、ヤケクソを起こした和人によって大成功のうちに終わった。
舞台袖に立つまりあは、拍手をしながらこちらを見つめている。明日奈が「こっちおいで」と言うと、恥ずかしそうに舞台へと上がった。
みんなで手を繋いで、真っ直ぐに天に向かって振り上げ、下ろすと同時にお辞儀。
急なソロによってすっかり壊れてしまった和人が謎のテンションで「ジャンガジャンガ」と手をあげては下げあげてな下げというどこかで見たような繰り返し方をし始め、その両隣で手を繋ぐ明日奈と直葉まで巻き込まれた。見かねた明日奈がごすっと彼の横腹に肘鉄をお見舞いしてやると、和人は腹を押さえながらそそくさと舞台袖に戻っていった。
観客席からどっと笑いが巻き起こったので、明日奈は苦笑いを浮かべ、手を振りながら和人の後に続いた。
「もう、バカバカバカ! なんであんな、どこかの新喜劇みたいなことするのよ」
「自分でも分かりません」
ホールを出た後、明日奈の剣幕(と言っても可愛らしいもの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ