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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
忘却の彼方に待つ世界
epilogue and prolog
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ともなれば、未来がある方に進むのが道理か。

それに―――もう目を背けるのは沢山だからな。
最後だけは口には出さず、胸の内でのみ語る。
過去の自分を悪と定義し、その為ならばと平気で過去の友人すらも切り捨てた青年を許した、異常とも言えるお人好しがいた。
しかし、許された本人は自分を許せないでいた。
簡単に割り切れるものでもなし。今までやってきたことを顧みれば、今更そう簡単に掌返しはできなかった。
―――だからこそ、少女は言葉に願いを込め、告げた。
強く、強く。ただ青年の救済を願った。
彼が自身を許せないのならば、せめて私が、と言わんばかりに。
彼に待ち受ける運命を知りつつも、一切の淀みなく願い続けた。
もしかすると、ここにいる声の主も、それに感銘を受け、手を差し伸べたのかもしれない。もしかすると、そのあまりにも無慈悲で滑稽な未来を知りつつ縋るその道化のような行いに、きまぐれを起こしたのかも知れない。
どんな思惑があったにしても、これが最初で最後のチャンス。
鬼が出るか蛇が出るか。もしかすると今までの体験が児戯に思えるほど醜悪な未来が待っているかも知れない。
―――だが、それでも。
例えなにが待ち受けていようとも、青年は決して歩みを止めることはないだろう。
それが彼―――エミヤシロウの生き様であり、信念だったから。
少女の知る彼の在り方こそ、真に彼女が戦場を共に駆けた存在の核に他ならない。
彼女は、そんな彼に幸せになって欲しかった。
ならば、それを歪めてまで意に反することは決してしてはいけない。
あくまで彼女が救済を願ったのは、そんな歪ながらも真っ直ぐな青年なのだから。

―――ならば、与えましょう。
居場所の無くなった存在が集う世界へ、貴方を誘いましょう。
貴方がそこで幸せになれる保証はありません。
傷つき、悲しむ事だってあるでしょう。
でも、それと同等の価値ある幸せが訪れる事だけは、保証しましょう。
しかし、その保証はあくまで貴方がどんな境遇に陥っても挫けないと言う条件のもとでしか成立しません。
貴方の頑張りを、観察させてもらいますわ。

パチン、と指をはじくような音が響く。
刹那、地に足のつかない感覚から一転、下から吸い込まれるような感覚に陥る。
下を見ると、そこにあったのは色の無い世界ではなく、緑が鬱蒼と茂る大地だった。
瞬間的に、自分が遥か上空から落とされたことに気付く。
これはまさに、凛に召喚された時の焼き回しだ。
これが偶然ではなく、意図的なものだとすれば、なんという皮肉だろうか。
あの時と同じ始まりを以て、今度こそ間違うなと。そう暗に示している気がした。

「やれやれ、どうしたものか」
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