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第二十九話 裏切りの刃
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「ごめん」









一振りのナイフが彼女の腹部に突き刺さった。

「……え?」

理解できない。
何が起こったのか……。

視線を下に落とす。

自らの腹に何が刺さっている。

固い何か。

それは、刃渡り30cm程のナイフ。

ナイフはすぐに引き抜かれる。

赤いエフェクトを散らす自分の体。
他の色には染まらず、ただ赤色が体から流れ出る。

意識が遠のいていく。

瞼が重い。

もう……何も。

考えたくない。

-------------------

止まった時計の針が動き出したかのように、一つの蒼い疾風がケイタに向かって突進した。

「テメェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」

憤怒の表情を浮かべたランサーが朱槍を手に、自らのマスターの敵である男へ槍を突き出した。

「Ahhhhhhhhhhhhh!!!」
「なっ!?」

だが、その槍の穂先はケイタを貫くことは出来なかった。

突如として出現した、黒い影によって遮られる。

「―――――――バーサーカー……」

鋭い目つきで睨みつける。
バーサーカーは、ちょうどケイタとランサーの中間で槍を受け止めていた。
此処から想定できる可能性……それはただ一つしかなかった。

「テメェがバーサーカーのマスターだったのか」

怒りの表情が消えることはない。
その怒りは、マスターを傷つけたケイタに対する怒り。

そしてもう一つ。
サチを守り切れなかった自らに対する怒りだ。

「ああ、そうだよランサー。僕がバーサーカーのマスターだ」

そう言い、左手に巻かれていた包帯をゆっくりと外す。
そこには、三画の未使用の令呪が浮かび上がっていた。

「最初からこれが目的だったのか――――――テメェ」
「そう殺気立たないでくれよ。サチはまだ死んでないのだから」

彼は、右手で抱えたサチをちらりと一瞥した。
確かに、HPは多少減ってはいるが、減少は止まっている。

だが、だからと言ってランサーの怒りは消えたりしない。

「……成程、じゃあ今からテメェを血祭りにあげてやる。動くんじゃねぇぞ」
「それはこっちのセリフだ、ランサー。もし君が一歩でも動いたら……」

ケイタはそう言うと、ナイフを左手に持ち…。

「彼女を殺す」

サチの首筋にそれを押しあてた。

「貴様……」
「おっと、その前に僕を殺そうったってそうはいかないよ。バーサーカーがその間、君を足止めする」

そう。
ケイタとランサーの間には、バーサーカーが塞ぐように立っている。

仮に、今ランサーが全力でケイタに向かおうとしても、バーサーカーに
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