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第二十九話 裏切りの刃
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てキリトとあった場所。
彼女にとっても、強く思い入れのある場所だった。

眼を大きく開く。
その視線の先に彼はいた。

見間違えようのない。

自分とずっとパーティを組んでいた人物なのだから。

「ケイタ……!」
「―――――サチ、久しぶり」

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「どうしたの!その顔、酷い事になってるよ――――――!?」

彼女の最初の感想はその様な言葉だった。
確かにケイタの現在の顔はサチの知っている優しそうな表情ではなかった。

髪は色素が抜け落ちたような真っ白に。
眼の下には大きなクマ。
頬は痩せこけ。
顔は青白い。

もはや、彼女の知っているようなケイタでは無かった。

「……まあ、あれから色々あってね」

ケイタは苦笑いしながらもそう答えた。
サチはそんな彼を見ながら、表情を引き締める。

「……心配したんだよ――――――あれから何度もメッセージ送ったのに、返事も返してくれない……。どこに居るかも分からない……。いったい…」
「サチ、あの時はすまないと思ってる――――――僕も軽率な行動をとって悪かった」

彼女の問いに、ケイタは素直に頭を下げた。
今までの事は、全部自分が悪かったと。

「あの時、傷ついたのは僕だけじゃないって事をやっと気づいたんだ。それなのに、僕だけがあの場から逃げ出して、サチを一人ぼっちにしてしまった。本当にすまない」
「……ケイタ」

素直にうれしかった。

彼女にとって、ケイタはギルドのリーダーであり、心から信頼できる人物であったから。
あの場では混乱していたが、自分だけが孤独を味わったのではない。

きっとケイタも苦しかったのだ。

そう思うと、自然と涙が流れてきた。

「……後で、キリトにも謝りに行こうと思ってるんだ。彼にも酷い事をしてしまった。きっと謝っても許してくれないかもしれないけど」

ケイタはそう言い、顔を上げる。
その表情は大変穏やかなものだった。

サチは彼にゆっくりと近づく。
そして彼の両手を握りしめた。

「―――――――きっと、キリトも許してくれるよ。キリトだって辛かったと思う。だから、ケイタが謝ってくれればきっとキリトだって……」
「……サチ」

ケイタがいきなり彼女を抱きしめた。

途端にサチの顔が真っ赤に染まる。

「…ッ!ケイタ!?一体―――――――!?」

彼女は気付いた、ケイタの肩が小刻みに震えている事を。

サチは、そんな彼をゆっくりと抱きしめ返す。
それは、恋人がするようなものではなく、母親が子をあやす様な手付きだ。

「……ケイタ」

ゆっくりと彼の背中を擦る。

「サチ……」

震える声が彼女の耳に届く。

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