第二十九話 裏切りの刃
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に…助けて貰っておいて、勝手に…もう会わないでって……私…嫌な子だよね」
「そこまでだ、嬢ちゃん」
今まで黙っていたランサーが口を開いた。
相変わらず、ぶっきらぼうな口調だが、やや穏やかさも見えている。
「それ以上は話すな」
これ以上話すことはない。
話せば、彼女はまた自分自身を責めることになる。
これ以上、彼女が卑屈になっていけば、戻れるものも戻れなくなる。
ランサーはそう判断した。
「何でもかんでも自分のせいだと決め付けちまうのは、嬢ちゃんの悪い癖だ。もっと冷静になって、周りを見てみろ」
そう言い、ランサーは光の結晶を撒き散らしながら姿を消した。
部屋に残されたのは、サチ一人。
体を抱えながら、なおも自分を責め続けていた。
「(――――――ランサー……無理だよ。私は、貴方みたいに強くないんだから。周りを見たって……キリトが許してくれるはずないじゃない)」
部屋の中にまた、嗚咽が響く。
もはや、彼女の精神は限界に近い。
相棒のランサーでさえ、その傷を癒すことはできない。
その傷は、自分自身で治すより他に無いのだから。
そんな中で、サチはおもむろに右手を動かした。
ウィンドウを表示させると、いくつかの工程を踏みあるウィンドウを開く。
フレンドリスト。
かつては何人ものプレイヤーが表示されていたが、今では一人も登録されていない。
否、登録はあるがもう意味を果たしてはいなかった。
グレーに表示されているプレイヤー名。
それを見て、サチは再び顔を俯かせた。
もう彼らとは会うことも出来ない。
この世界から……そして向こうの世界からも永久に消えてしまったのだから。
瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
背中を丸め、顔を下に落とす。
彼女は孤独に耐えるため、再び蹲ろうとする。
だが、その静寂の時間は唐突に破られた。
彼女のウィンドウに、新たなメッセージを受信したと知らせが届いたのだ。
「……え?」
困惑しつつも、彼女はメッセージを開くべく右手を動かした。
差出人の名前を確認する。
次の瞬間、彼女は大きく目を見開いて、そして焦ったようにメッセージの内容を確認した。
「――――――!」
もはや言葉にすることも出来ない。
先程まで、彼女の顔の中にあった絶望が、跡形もなく消えていた。
今の表情を言うならば、驚愕と希望。
サチはメッセージをものの数秒で読み終えると、焦ったかのように部屋を飛び出した。
ウィンドウを操作する時間もじれったいのか、装備を変更する事もなく、部屋着のまま。
宿の扉を乱暴に開くと、猛然と走りだした。
普段の彼女には見られない乱暴さだ。
そんな彼女に驚い
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