≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
秋風のコガネ色 その壱
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して歴史を知らなくてはならない。知識の足りなかった前線メンバーでまさかクエスト攻略会議を開く羽目になるとは……。むしろあれは攻略会議というよりも勉強会に近かったのだが。
例で分かる通り、この層でのプレイヤーの役割は、≪迷宮区へ登り百層を極める人間≫だけではなく≪三十三層を流浪し二国の問題を解決する坂本龍馬≫という一面も持っている。
実際、外交職にハマったプレイヤーは関所の攻略に関係なしに用もなく二国間を行ったり来たりしている。情報屋≪鼠のアルゴ≫もそうだった。彼女曰く、稼ぎ時ダ! らしい。
そしてついに今日、何週間もかけて行われた≪関所攻略戦≫は終結し迷宮区までの道が切り開かれた。
そんな晴れた日に俺と友人一人は迷宮区ではなく断崖絶壁の≪マイヴ境界断線≫の南方に探索に出ていた。
何故、と問われ答えるとすると、長い階層の停滞のせいでレベルが限界値まできていること、未解決クエストの調査、あと一つ、とあるNPCに関する情報によるところが大きい。
三十三層は重厚なストーリーをプレイヤーになぞらえさせるためにか、かなり多いクエストが各地で発注されている。中には平和的な採取系のクエストかと思って受けたら闇商人の密輸を手助けするクエストだったりすることもある。俺もそれで一度痛い目にあった。中中に金換算がウマいクエストではあるのだが、失敗した場合のデメリットが痛すぎた。一週間も風と土、どちらもの主街区に入れなくなった時は本当に泣きそうになったものだ。
このように第三十三層に限って言えば、どのクエストにも旨みと不味みがあると断言できよう。
だからこそ俺達は攻略ルートから外れた、もっと言えば村人の噂程度にしか情報として出てきていない南方の村に向かって歩いている。一味違う、そんな面白いクエストを求めて。
「正規ルートじゃないわよね、これ」
隣で、ブルーのロングコートを羽織った少女が黒に近い藍色の長髪を指先で構いながら俺に話しかける。彼女の横にある上にも下にも空っぽの空間から吹き込んでくる秋の冷たい風に藍色の彼女はロングコートと長髪を揺らす。
「でも南の村、ってしか話に出てこなかったから仕方ないだろ? 南方に続く通路も無いしさ」
「だからって何もこんな崖ギリギリを歩くことないじゃない……。SAOに≪魔法の壁≫はないのよ?」
魔法の壁、とは落下防止用の見えない壁のことだろう。魔法を失った世界観のSAOでは中々に皮肉のこもったスラングではないだろうか。とは言ってもこの崖は落下しても下から吹き上げてくる突風で落下速度を相殺されるため、安全マージンを取っていたならばタンクでなくても即死はしない。深読みすればこれも≪魔法の壁≫と言えるだろう。
色々なことに感心しながら
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