≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
秋風のコガネ色 その壱
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の大魔法≫を行使した。
この魔法の跡は現在でもよく見ることができる。その爪痕で二頭の巨竜は健全な統治者であるだけでなく、凄まじい魔法使いでもあったことも伺える。
大魔法により大地は両陣営のちょうど境界線上で一寸の狂いもなく高低差で分断された。土の竜の領地は高々と盛り上がり、風の竜の領地は沈むように低くなった。その差はなんと人間三十人にも匹敵するというほどの巨大な断崖絶壁だった。交通の便宜を図る一つの緩やかな坂道を除いて二つの領地は完璧に隔離されたのだった。
戦争の火種も潰し、一応の落とし前も着け、両国の関係は改善された。民たちは終戦を祝って、二竜の懐の深さに感謝しながら、少ない物資で各々の街にて質素な祭りを執り行った。こうして平和が訪れたかのように思われた。
だがしかし、その夜、不運にも大地は≪切り離された≫。
切り離された瞬間、誰もがとある事を思い出し蒼白した。つい先程、酔いで顔を赤くしながら酒の肴にしていたとある事実に。そう――切り離された歪な円の大地には、崩壊を連想させる不吉な断崖が聳え立っていたのだ。
大地はひび割れた卵のように崩壊するかのように思われた。
だが、自責の念に囚われた二頭の偉大なる大魔法使いの尽力により、何とか空中でも形を保てるまでに持ちこたえさせることができたのだ。空中に漂う大地が安定した状態になると――二竜は安心したかのように力尽き、絶命した。
そうして空中に漂う、刀で斬られたかのような縦ズレを持った第三十三層が誕生した。
これがこの三十三層の伝説であり歴史である。現在は二代目の竜がこの大地を統治している。
三十三層を攻略するに当たって、この情報はなくてはならないものだった。
なんといってもこの三十三層、迷宮区のタワーに行くまでに何度もの関所による通行止めを喰らわされていた。その理由は大抵、この土地の歴史や政治に関するもので、竜王達や役人達の出すクエストをそれぞれ攻略しなければ通行止めは解消されない。オフラインRPG風味の遠回りな進行に加えて、このクエスト内容も中々に難解な仕上がりとなっており、政治用語や先代の竜の名前や発音の似た地名をポコポコ出してくるために余所者という身では非常に混乱しやすい。
そのため、クエスト攻略組はこの地の歴史と政治を知識として頭に叩き込まなくてはならない。
このステージは舞台設定を相当凝っている。例えば、御使いのクエストかと思ったら役人にたらい回しにされ、クリアするには漢文に出てくる宰相みたく軽快な言いくるめをしなくてはならないという推測情報が出回ったときは、攻略組一同絶句の渦に呑まれたものだ。
彼らを言いくるめるにはまずこの層の予備知識と
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