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渦巻く滄海 紅き空 【上】
七十九 綱手VSうちはサスケ
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ヒルゼンが目覚めないとなると話は別だ。




「信任投票は今日の夕刻までだったか…」
「しかし、このままではダンゾウが火影になるのも時間の問題…」
「再検討に持ち込めば…」
ぶつぶつと討論しながら病室を後にする御意見番二人。シズネもまた、綱手の火影就任について詳しく話を聞く為に二人の後を追った。

自来也は忍犬であるパックンと共にカカシを捜しに行き、一人残される綱手。
否、自ら残ったのだ。

火影を決める大事な決議の前に、彼女には見ておきたいものがあった。














白波。千波万波が織り成す景観。

だが此処は海でもなく川でもない。数多の白いシーツが風に煽られているだけだ。
患者の洗濯物だろうシーツの波間を通り、綱手は屋上の端へと向かう。大波小波と打ち寄せる白を背後に、彼女は木ノ葉病院の屋上から下を覗き込んだ。

「綱手のばーちゃん!!」
矢先、酷く焦った声が綱手を呼び止める。振り返ると、波風ナルがはぁはぁと肩で息をしていた。
里中を捜し回ったのだろう。額に流れる汗を無造作に拭って「やっと見つけたってばよ!」とナルは叫んだ。

「なんだい?私に木ノ葉病院へ行けって言ったのはお前だろう?」
「うぐ…っ!じゃ、じゃあ、ゲジマユはもう診てくれたんだってば?」
「あ……忘れてた」
「何しに病院に来たんだってばよ!?」

地団駄を踏むナルに、綱手は内心苦笑した。
一介の下忍であるナルは三代目火影の生存を知らないのだ。けれどヒルゼンを診察したなどとは言えるはずもなく、綱手はナルをぞんざいに宥める。
ようやく落ち着きを取り戻したナルが「なんで屋上なんかにいるんだってばよ?」と訝しげに訊ねた。

その問いに、改めて屋上から下界を見下ろす。活気ある街並みを眺めながら、綱手はぽつり答えた。
「見ておきたかったんだよ――――この里を」


久方ぶりの故郷。ふるさとである木ノ葉に足を踏み入れた瞬間、綱手の心に湧き上がったのは、この里を支え守る火影になれる誇らしさと恐怖感だった。

里の長とは、里人達の居場所であり拠り所である。
里人は皆、里長に一切を信頼し、自らの命を預ける。その大役をこの自分が務められるのだろうか、と綱手は不安を覚えたのだ。

自信に満ちた彼女らしからぬ感情。その原因は、かつての弟子――アマルの一言。
「『神サマ』だけがオレの唯一の居場所なんだ」

師である自分ではアマルの居場所にはなれなかったのか、と綱手は唇を噛み締める。特に『唯一の居場所』という語は彼女に多大な衝撃を与えた。

だからこそ綱手は懸念する。弟子の居場所にもなれなかった奴が里人の居場所である火影になれるのか。里に住まう人々の拠り所になれるのか。
その反面、尊
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