■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆自己の非同一性
第五十三話 自分探しの旅
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れてるじゃない。一体何があったの」
ミドリは黙ったままだったので、シノンは更に一言加えて言った。
「とりあえず、話してみたら。私に話したって解決しないだろうけど」
シノンはミドリの言葉を待った。ミドリはしばらく沈黙していたが、やがて意を決して口を開いた。
「――話せるとしたらお前しかいない。頼む、聞いてくれ」
「俺は自分が誰なのか分からなくなってしまった。俺がここに来てこの姿になってからずいぶん日が経ったが、マルバたちはずっと俺をミズキとは違う別の一個人として見てくれている。それにも関わらず、俺は自分がミズキなんじゃないかと無意識的に思うことがしょっちゅうある。矛盾しているようだが、つまり、『俺はミドリだ、ミズキとは違う人間だ』っていうふうに意識しなくては恐怖に気が狂いそうになる瞬間があるってことだ」
ミドリは一瞬身体を恐怖に震わせた。
「――身体が俺の意思を離れてミズキとして勝手に振る舞うんだ。これはもしかしたら普通の人間には当然なことなのかも知れない。無意識的に行動するというのはよくあることだからな。だが、俺の場合、この身体はもともとミズキのものだったせいか、身体が無意識的に『ミズキとして』行動するんだ。俺自身の無意識的行動ではなく、な。だから、俺は俺が誰なのか分からない。俺は本当にミドリなのか? それとも、俺がミドリだった時の記憶が残っているだけで、俺は本当はミズキなのか? そもそも俺にはミズキの記憶も残っている。ミズキっていう人物がどういう人物なのか、俺は十分に知っているんだ。それなら俺はミズキなんじゃないか? ミズキの身体を使い、ミズキの記憶を持つ俺は、ミズキとは違うミドリという一個人だと言えるのか? 思考が個人なのか、身体が、記憶が個人なのか? わからない、わからないんだよ、俺には……」
「ミドリはミドリであってミズキじゃない、っていうのは前にみんなでキリトの家に集まった時に出た結論だったじゃない。ミドリの身体はミズキのもので、思考しているのがミドリ、って話だったでしょう? それなら、無意識下の行動、つまり思考しないで行う行動がミズキのものだったとしても、あんたがミドリであることは変わらないと思うけど」
違う、とミドリはつぶやいた。
「そうじゃないんだ。『Midori-MHCP003』はもはやAIである俺の意識を残して存在していない。単体では動作しない、つまりは欠陥品だ。ミズキも脳の一部を損傷していて、単体では思考できない。こっちも欠陥品だ。だから、今の俺は『ミドリ』と『ミズキ』の二つの部品から成る、どちらでもない存在なんだよ。どちらが優位とかどちらが劣位とかそういう話じゃなく、俺はすでにどちらでもない存在なんだ。だから俺は俺を規定できない。俺はミドリではないし、ミズキでもない。でも俺に与えられた|名前《キャラ
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