第13話〜貴族と平民と〜
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なさを嘆いていた。手負いのリィンにエマが応急手当を施すと、とりあえず痛みは消えたようだ。
「すまない、その・・・」
「・・・完全に俺たちのせいだな」
「いや、気にしないでくれ。気づかなかったのは俺のミスでもあるし・・・
とにかく2人に怪我がなくて良かった」
怪我をしたのは完全に自分たちの失態だと言う二人に、彼らを驚かせるほど優しい言葉をかけるリィン。彼は暫く後方に入ることになり、彼に長く負担を強いたくないのか、妙に積極的なマキアス・ユーシスに続いて渓谷を渡って行くのだった。
「待て・・・!これはどういう事だ!?どうして地方の領邦軍なんかに最新の戦車が必要になるんだ!?おまけに砦を大幅に改造して対空防御まで備えるなんて・・・さすがに常軌を逸しているぞ!?」
道中でピンクソルトを回収し、オーロックス砦にて領邦軍に魔獣討伐の報告を行った後、足早に帰ろうとするユーシスに、マキアスが文句を言う。着いてすぐ、砦付近の線路をRF社製最新型主力戦車、通称アハツェンが通過していく光景を見て軍備増強を誇らしげに語っていた領邦軍の話を聞けば無理も無いだろう。マキアスに答える形でユーシスが言うには、四大名門を筆頭にした貴族派。鉄血宰相ことギリアス・オズボーン率いる革新派。両者の対立は水面下で激化している。先ほどのものがその一端で帝国の現状だ、と。
「軍備増強を決めたのも俺の父、アルバレア公爵だろう。だが、その事について俺からコメントするつもりはない・・・文句があるなら受け付けてやってもいいが?」
「・・・いや、いい。そろそろ夕刻だし街に戻るのが先決だろう」
激化の現状は確かに深刻だが、それについて言及しても変わらないだろう。そう思い直したのか、マキアスが折れてバリアハートに戻ることになった。
(いがみ合っている結果がこれか・・・ケルディックの人たちの生活が苦しいのは俺たちのせいなんだろうな)
自身の境遇と重ね合わせ、複雑な心境になって暫し考え込んでいたケインは、リィンに呼びかけられて先行していた彼らの後を追った。
折り返しを過ぎたあたりで砦の方から微かにサイレンの音が聞こえてきたのに気付いた一同は立ち止まる。何らかの気配を察知したケインが空を仰ぎ、他の4人もそれに続いて見たのは、白銀の傀儡に乗った少女が上空を通り過ぎて行く光景だった。
「な、何だアレは!?このあたりにはあんな鳥が飛んでいるのか!?」
「阿呆が・・・そんなわけあるか」
もともと目が悪く、眼鏡をかけてようやく標準であるマキアスの動体視力では分かりづらかったかもしれないが、あまりにも的外れだ。ユーシスが堪らずツッコむのも理解できる気がする。見えなくなるまでその傀儡を眺めた後、ケインは目撃して得た情報だけを簡潔にマキアスに説明した
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