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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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白く塗られたコンクリートの壁と、畳が敷かれた床。
国立児童社会復帰センターの体育館。一階に間取られた一五平方メートル一二八畳の柔道場。
白壁の上部に嵌められた窓からは午前の青い光が差す。遠く外の運動場からは時折銃声が響く。
「それじゃあ、モモ。お前に俺の近接格闘術を叩き込む。俺の沽券にも関わるから、これからは出来るだけ負けないように」
その静寂の中に、低い男の声。蔵馬だ。場所に相応しく、使い込まれて袖や襟のすり減った道着を纏っている。
「顎を引いて、身体は正面に向かって斜めに傾ける。肝臓がある右側が後ろだ。
両手を顎の近くまで挙げて、脇は締める。拳は固く握るな。筋肉が強張って動きが遅くなる。
脚は肩幅より少し広く。重心に常に気を配れ。転んだら死ぬぞ」
言葉が向けられた先、長い黒髪を後ろで一つに結った少女が、彼の言うとおりの姿勢を取る。
純白の新品道着を着たモモだ。
蔵馬はモモを一周して全身の構えを確認し、頷く。
「まあいいだろう。その構えが基本だ。忘れるな」
「はい師匠!」
「いやそういうノリいいから。じゃあまず、格闘技の基本、分かるか?」
「パンチですか?」
「そう、パンチだ。今から教えるのは基本中の基本パンチ――ジャブだ。
これが全ての攻撃の始点であり、初めのジャブ一発で終わらせるのが理想だな」
言いながら、蔵馬は左手を顎まで挙げ、ジャブを宙に放つ。
肩が、腕が、手首が鋭くしなる。道着の袖が乾いた音を立て、鳴り終わった時には既に蔵馬の左拳は顎の位置に戻っていた。
常人には反応が難しいほどの速度。全身の筋肉が無駄なく作動し、体重が乗せられた一閃。
これを一発顎に受けた人間は、間違いなく脳震盪を起こして行動不能になるだろう。
現に蔵馬はこのジャブだけで、今までに幾人ものテロリストを倒してきた。
「やってみろ」
「はい」
モモは左の拳に力を込め、そしてジャブを打つ。
とろっとした、鈍く、遅いジャブだった。重心も拳に乗らず、上半身だけ打っているから姿勢が前のめりになっている。
「…………」
これでは格闘技を少し齧った事のある人間なら簡単に躱せる。
蔵馬はモモの姿勢を直し、要点を一つ一つ説明していく。
重心の移動。腰の回転。肩と腕の動作。そして拳の固め方。
「十発くらい打ってみろ」
モモは十回、錆びたぜんまい人形のような動きでジャブを打つ。
「どうですか?」
「うーん……」
思わず唸ってしまう。
初めから変に銃器の知識があったり、すんなりとその撃ち方を覚えたりしはしたが、こっちの方は一筋縄ではいかなそうだ。
同じ体術でも、タンポポはすぐに斧の扱い方を体得した。初瀬が案外教え上
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