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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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本当はいつもすきっ腹を抱えているのかもしれない。だからアザミはこっそり救荒食であるジャガイモなんぞを育てていたし、その空腹が限界に達した故に、この前はつい池の錦鯉など食ったのだろう。
飢餓の辛さは身に染みて分かっている。よもや自分がそのことに気付いてやれなかったなんて、担当官、いや、大人失格だ……。
「すまなかった。帰りに美味い物をお腹いっぱい食わせてやる」
「え、本当ですか!? やった!」
蔵馬の憐憫溢れる面持ちとは対照的に、モモはルンルンニコニコで車を降りた。
車を発進させる前、蔵馬は窓からモモの顔を覗いて言う。
「お前ならたぶん知らん男に声を掛けられるだろうが、絶対について行くなよ。無視するか、しつこいようなら俺に電話しろ。いいな?」
「分かりました」
モモの頷きに頷きで返し、蔵馬はハザードランプを切って、シフトレバーをニュートラルからドライブに切り替える。アクセルを踏み込んで車線に戻り、手を振るモモが後方に消えていくのを見ながら、小さく溜息。
そしてスーツの内ポケットから煙草の箱を取り出した。
蔵馬を見送ったモモは、五千円を丁寧に折りたたんでブレザーのポケットに入れ、ぐるりと周囲に目を巡らせた。
本厚木駅前の広場。あちらこちらから人が湧き出て、駅に吸い込まれていく。そして同じだけの人間がまた駅から流れ出てくる。平日の午後だけあって、制服姿の少年少女が多い。
とりあえず人ごみに入ったモモは、ある場所を探して足を動かしていた。
いくつかの信号を渡り、路地を抜け、そして見つけた。
赤い看板に黄色のM。アメリカ合衆国が誇る肥満と塩分過多の殿堂、暴力的なまでの脂質と化学調味料で世界中の舌を虜にして止まない、ファーストフード界の首領。マクドナルドだ。
「……えへ」
その店舗前で、モモは緩んだ笑みを漏らす。
たまに任務で街に出るとかなりの頻度で目にしていたこの店に、モモは変な好奇心と憧れを抱いていた。
マクドナルドに対して、モモは様々な評価を耳にしている。
蔵馬曰く、日本に住んでいるならわざわざ食う必要のない物。
常盤曰く、味が濃すぎて舌がバカになる物。
石室曰く、太るための食事。
初瀬曰く、美味い。
坂崎は『時々食べたくなるんですよねー』と言っていた。
他のセンター職員も、似たり寄ったりな、肯定とも否定とも取れない事を言う。そんな不思議な食事を提供するのが、モモにとってのマクドナルドであった。
ずっと前から訪れてみたかったのだが、機会に恵まれなかった。そもそも奥多摩にマクドナルドは無い。
そしてこの度、ついにマクドナルド入店のチャンスを得た。軍資金もたんまりある。価格設定は知らないが、きっと足りるはずだ。なんたってこち
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