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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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る。担当官との連絡以外には使えない、まさに電話としてのみにしか使えない代物だ。精神年齢が時折見た目の齢を、見た目の齢分下回る義体にインターネットは害悪でしかないのである。
「念のために言っておくが、絶対に銃を抜くなよ?」
「分かってますよ、それくらいの常識はあります」
「そうか、まあそうだよな。すまん」
さすがに心配し過ぎたか。
先日焼き芋と詐称してセンター内で飼育している鯉をアザミたちと密かに貪り食った事件が、変な疑心の尾を引いているのかもしれない。
モモは普段からどこか抜けているし不真面目でもあるが、最低限の常識はある。
蔵馬はモモへの信頼に欠ける発言に反省し、そして今日の昼食がまだだったことを思い出す。
「モモ、金の使い方は分かるか?」
「失礼な! こう見えてもやりくり上手なんですよ!」
モモは鼻を鳴らして胸を張った。
以前、アザミやムラサキ、タンポポらと石室に連れられて青梅まで出た際、石室にお小遣いとして百円を貰って駄菓子屋でお菓子を買った経験がある。そこでモモは、十円の駄菓子のみを攻めて物量による満足感を得ることに成功している。五十円の高額商品二つで済ませたアザミや、三十円前後の商品で中途半端な買い物をしたムラサキ、何故かおみくじを引いて吉と書かれた紙切れを手にしたタンポポと比べて、格段に買い物上手と言える自負が、モモにはあった。
自分ならば、百円どころか、一つハイランクな五百円硬貨すら使いこなすことが出来るに違いない。
モモの内心を与り知らぬ蔵馬は、何故か自信満々な様子のモモの怪訝そうな顔をしながらも、自身の黒革財布から適当に中身を抜いた。
「じゃあこれで適当に飯でも食って待ってろ」
「………………………………」
「どうした?」
「ごっ……ごっ……!」
五千円だった。樋口一葉だった。身の丈を大きく上回る大金だった。
過去に使った金額の五十倍だ。こんにゃくスティックゼリーを五百本買える。おみくじだって五十回も引ける。確実に大吉を引けるだろう。
「いいんですか……こんな大金……!」
「大金……? うん、まあ好きに使え」
「うわああぁ…………!」
まるで待ちに待った補給の食糧を受け取ったガダルカナル島の日本兵のように爛々と目を輝かせるモモに、蔵馬は自分の義体に対する接し方に不安を持つ。
――俺はそんなにモモに貧しい思いをさせているのだろうか……?
欲しいと言った物はだいたい買い与えてやっているつもりだったのだが、年頃の娘と言えば娘な彼女にしてみれば、色々と不足していたのかもしれない。
それとも、センターの食事が足りていないのだろうか。彼女らは基本的に現状に対する不満をあまり言わない。だから黙って耐えているだけで、
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