暁 〜小説投稿サイト〜
あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
08
[3/10]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
。ちゃんと用はありますよ」
背の高い蔵馬を見上げて口角を柔らかく上げ、坂崎は手に持っていた黒いバインダーを差し出した。
「お仕事です」
神奈川県厚木市。東京や横浜のベッドタウンとして人口を抱える街だ。
蔵馬はヴェゼルの助手席にモモを乗せて、厚木市の中心である本厚木駅までやって来た。衛星都市としての機能が強い街だが、本厚木駅の周辺は繁華街の様相を見せて雑多としている。
蔵馬はヴェゼルを路肩に停め、車内時計で時間を確認。
午後三時過ぎ。奥多摩から高速道路をかっ飛ばして遥々やって来たが、一時間以上かかってしまった。
「ここに対象が潜んでいるんですか?」
停車したヴェゼルの周囲を見渡すモモは、外の人々を大きな瞳をクリクリ動かして追いかけている。
「対象……まあそうだな。ここらでクレジットカードを使った形跡がある」
坂崎が持ってきた仕事は、人物の捜索だった。
ただいつもの違うのは、捜索対象がテロリストでもその協力者でもない。一般人の少女だ。
蔵馬はダッシュボードに置いていた黒いバインダーを手に取る。そこには三白眼気味な黒髪の少女の写真と、彼女の詳細なデータが書き込まれた書類がある。
名前は斎藤美希。十五才。神戸にある私立高校の一年生。父親は外交官。母親は専業主婦。そして母方の祖父は――。
「西京重工業の重鎮、斎藤孝三か……やれやれだ。こういうのは常盤が大得意なんだが、あいつ今大阪に出張中だしな」
「その人って私たちと何か関係あるんですか?」
「西京重工業は、センターの資金提供元の一つだ。公な資金提供じゃないが」
「その大口投資者の孫娘が行方不明になったから、私たちまでその捜索に駆り出されてる訳ですか」
「行方不明ってほどでもない。ただの家出らしい。とりあえず俺は一旦警察署に行って情報を集める。もしかしたら補導されてるかもしれん。お前は……そうだな」
バインダーを閉じてモモに渡し、蔵馬はモモの顔を見る。
いつも通り、幼気な美少女だ。この娘を連れて行って、事情を知らない警察官は自分の話をまともに取り合うだろうか。否だろう。車の中に置いておくのも、それはそれで人目を引く。
「その辺ぶらぶらしてろ」
「ええ、なんですかそれ。私も一緒に行きますよ」
「連れて行きたくないから置いていくんだ。この辺はセンターの顔が効かない。お前がいると目立って仕事が滞る。情報が集まったら迎えに来る。ほら、これ持ってろ」
蔵馬は懐から、今や旧式となった折り畳み式の携帯電話を出してモモに渡す。
任務中に担当官と義体が別行動を取る際に、連絡用にと支給されている物だ。
フィルタリングが掛けられており、インターネットには接続できないように設定されてい
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ