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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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手という事もあるだろうが、それ以前に義体の潜在能力の差であるようにも思える。
そういえば、と蔵馬は思い出す。
日本製義体の運動性能は、ある程度義体の素になった人間の影響を受けると技師たちが言っていた。耐久年数を伸ばすため、神経系は多くが素体の物をそのまま使われている為らしい。
確かに同じ人工筋肉を用いて作られている割には、義体たちには身体能力にある程度のバラつきがある。例えばアザミは信じられない程の瞬発力でノミのようにピョンピョン飛び跳ねるし、タンポポはセンターに至る山道でエンストした初瀬のデカいアメ車を、センターの駐車場まで一人で押してきた。
比べてモモは、300キロの訓練用丸太をなんとか一人で担げる程度の膂力しか持たない。恐らく元は運動が苦手な少女だったのだろう。
「まあ、何事も初めから出来る奴なんていないか」
そう結論付け、蔵馬はモモの肩を叩いて。
「じゃあ取り敢えず、ジャブ千回」
「千回……頑張ります。一、二、三、四……」
マンガみたいな目標設定だが、蔵馬の眼は本気だ。モモは黙って拳を刻み始める。
地味な稽古だが、これが案外キツイ。人工筋肉は本物の筋繊維よりも持久性が高いが、それでも三百を超えた辺りから肩の辺りが熱くなってきた。
「……クラマさん、義体って鍛えたら筋肉つくんですか……?」
「つかん」
「じゃあなんでこんな事を……」
「筋肉を鍛えてるんじゃない。神経を作ってるんだ。いいから黙ってやれ」
そう言われたらやるしかない。柔道場内に、ジャブの動きに弾かれる道着の袖音だけが響く。
モモが千本ジャブを始めてから数分後。
回数が残り三百を切った頃に、柔道場に顔を覗かせる者がいた。眼鏡の女、坂崎だ。
開けっ放しだった戸を潜り、足音を立てずに畳の上を歩く。蔵馬の背後まで行き、モモと向かい合って悪戯っぽく笑んだ。
モモと目が合う。
モモは助けを求めるような目をするが、坂崎はいつもの笑顔を振りまくだけだ。
「動きが鈍くなってきたぞ。ロボコップみたいな動きしやがって、ヤル気あるのか」
「……あります!」
「だったらもっと気合い入れろ。一九八〇年代のロボットに負けるんじゃない。最新型だろうが」
「……はい!」
「腕が下がってきてるぞ。どんなチビと戦うつもりだ、腕挙げろ」
「腕挙げろー」
声が混じった。
背後からの坂崎の声に蔵馬は肩の筋肉をピクリを動かし、しかし落ち着いた態度で彼女に振り返った。
「……いつからいたんだ」
「たった今来たところですよ。楽しそうにしてるから、邪魔するのもあれかなーと」
「本当に邪魔しにきたなら仕事に戻れ」
「いやー蔵馬さん全然気付かないからちょっと興が乗っちゃって
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