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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第九話 妖精のお色直し(前)
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プを俊敏に取り上げたのだ。
「戯言はそこまでにしておけ。イフリート様が焼いたのなら、もっと法則性のある幾何学的な紋が現れるものだ。イフリート様は秩序を重んじる生真面目なお方。このような奔放な紋が出るはずあるか!」
女性も店主もあ然とイバルを見返すばかりだ。
「貴様も!」
イバルは怒鳴ってカップを女性に突き返す。
「こんな贋作、一目でそれと知れるだろう。精霊の恩恵に与かる民ならば、もっと精霊の歴史と気質を学んで出直して来い!」
広場のざわめきが質を変える。視線がこちらに集中しているのをヒシヒシと感じる。
……馬鹿も利かん坊も操縦次第。だが、忘れていた。こいつはとんでもなく目立つんだった!
(どーするよダンナ。バカ巫子担いで裸足で逃げる?)
(私もフェイリオも指名手配の身だ。旅行者の多いカラハ・シャールで人々の記憶に残るのはまずい。やむをえん。とにかく一度街から出る)
(アイッサー)
アルヴィンが背後から音もなくイバルとフェイリオに両手を伸ばし――
「おや、お若い方にしては珍しく精霊史にお詳しいのですね」
しわがれた声が、ざわめきも風の音も耳から掻き消した。
「まあ、ローエン。残念。今日こそ悠々自適にお買い物できると思ったのに」
――ローエン・J・イルベルト。
指揮者
(
コンダクター
)
の名高いリーゼ・マクシアの初代宰相。
かくしゃくとした笑顔も、老いを感じさせないまっすぐな立ち姿も記憶にあるまま。
私が湖に沈めた、友人、の一人。
「ドロッセル様。お一人で出歩かれては旦那様が心配なさいます」
「兄様だけ?」
「無論、私もでございますよ」
ドロッセル…? ! まさか、カラハ・シャールの領主ドロッセルか!? ローエンは宰相の前はシャール家の執事をしていたというから平仄は合うが。
「あ、あんたこのお嬢さんの連れかい。だったら何とかしてくれよ。ウチの品物は正真正銘の本物だ。ケチつけられちゃ商売上がったりだ」
ローエンは店主の苦情など気にした風もなく、イバルが取り上げたカップとセットのソーサーを持ち上げた。
「少々お尋ねしたいのですが、
大消失
(
グランロスト
)
は何年前でしたかねえ? 歳のせいかド忘れしてしまいまして」
にこやかにイバルに尋ねるローエン。
「20年前だ。精霊の主マクスウェルに仕える四大精霊、イフリート様、ウンディーネ様、シルフ様、ノーム様がミラ様と地上に降りフゴッ!?」
イバル〜? さすがにそれ以上機密漏えいしたら、今腕で塞いでいる口を糸で塞ぐ。それこそ現役時代のローエンのように刺繍糸で。
「そうそう。20年前でした。大消失の影響で20年前からイフリートの召喚は不可能になっている
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