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乱世の確率事象改変
赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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 ズキリと彼の胸が痛むも気にしない振り。
 黒麒麟が自分のように彼女の為だけに行動したかは分からずとも、此処で見せてやるわけにはいかない。

「さあ、なんのことやら。ただ、俺にとってはお前達も助けたい奴等だって言っておく」

 長い話に、周りの兵達も聞き耳を立て始めていた。
 ああ、こいつは不振も与えるつもりなのか……そう気付いて、彼は彼女を見下ろして笑う。
 兵達にも聞かせるように、彼は声を彼女に落とした。

「あんまり待たせてくれるなよ? 曹操殿も俺も、あんまり気が長い方じゃあないからな。お前さんの働きに期待してるよ、紅揚羽」
「真名すら呼んでくれないなんてつれないじゃーん。ま、いいけどさ。じゃあね、黒麒麟」

 もう話す事は無いと、彼は背を向けてその場を後にした。
 残った静寂に、ひょこひょこと歩いて去っていく少女が一人。

――俺の過去をお前に賭けよう。

――あたし達の未来をあなたに賭けよう。

 背を向け合った黒と赤は心の内で呟きながら、どちらも、幸せにしたい一人が救われて欲しいと願っていた。



















 †




 白の世界でモニターを見やる少女はため息を一つ。
 歪む表情は不満からでは無く、彼に向ける悲哀から。

「……第二適性者“関靖”の残滓が混じりましたか。私の頸に残滓が残ってるなんて……どの適性者もイレギュラーだらけです」

 独り言はもはや癖になっていた。自分しかこの場所にはいないから、誰も聞いていないから、思うだけでなく口から突いて出てしまう。
 呟きと同時にカタカタとキーボードを打って行く。
 長い文字列を完成させたと同時に、モニターの半分が切り替わった。

「第一と第二はループの絶望に耐えられませんでしたから……やはり徐晃には、妲己姉さまの尻尾での記憶の継続遮断も用いて正解です……」

 何度も、何度も殺される少女の姿が其処にあった。
 その度に巻き戻る世界。大切な人を救えない事に絶望し、それでも抗い続ける少女が居た。

「世界改変、この外史の崩壊を防ぐ方法が“乱世を天の御使いと呼ばれないモノが関与して治める”ではなかったなんて……第一が外史に取り込まれて初めて気付いた私達の失態……」

 振り慣れない斧を片手に振った一度目から、赤の少女に主と共に殺され続けて二十二度、何度も何度も少女は抗った。

「第一の影響力が強すぎた為に、世界側は復元力(カウンター)を押し上げてバランスを保ち……その結果、公孫賛が死亡確定なんて事態に……」

 敵は変わらず、強大な袁家。世界は彼女に残酷過ぎた。
 黒が策を出し続け、赤が赴き彼女を殺す。どれだけあの三人の英雄と昇龍を彼の地に留
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