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オシマイシマイの止まない雨
オシマイシマイの止まない雨
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「鎮守府の中の医務室さ。疲れている様子だったから、ちょっと休んでもらっているんだ」
 私は、それなら自室に帰らせてくれればいいのに、と愚痴をこぼす。時雨は笑っていた。いつも彼女は曖昧な笑い方をする。もっとも、提督の命令ならば、私はここで待機をするべきなのだろう。提督が、意地悪をするような人間ではないことくらい、わかっている。なんらかの事情があるのだろう。

「でも、私をこんなところに長い間詰めておくなんて、提督は何を考えているのかしら」
 時雨の顔が少し、強張った。そして、私の顔も同様だった。
 ――長い間、ここにいる?
 それは誰でもない、自分自身から何気なく出た言葉だったが――それは何故そう言ったのか、わからなかった。私はここに長く居るのだろうか……他の長門や陸奥などの大型戦艦でさえ、ドックでの修復に精々一日ほどしかかからないというのに……。
「あら……私、変なことを言ったわね」
 時雨は特に何も答えず、やはり曖昧に笑うばかりである。彼女はいつもの笑顔を絶やさずに話題を変えた。
「髪が長くなったね。僕が切ってあげようか」
 私の髪を触ってみると、確かに少しだけ長くなっている。私は、もう少し長くなったら切るわ、と返すと、時雨は、そうかい、と寂しげな表情を浮かべた。それでも彼女が未練がちに私の髪を触っていたので、私は訊いた。
「そんなに不格好かしら」
 私は髪に指を通す。いつもより、ひっかかる。こんなところにいるストレスのせいかもしれない。寝起きなので、髪の癖を直すように手櫛で整えて時雨に向き合う。時雨は、何故か言葉に詰まったようで、しばらく逡巡した後、答えた。
「いや……それも似合っているよ」
 切ることを薦めたり、似合っていると言っていたり、おかしな時雨ね、と私が笑うと時雨も笑っていた。彼女は少し犬のような雰囲気を持っていて、笑うとなんとも言えず愛らしい。犬は犬でも、姉妹艦の夕立から連想する元気な子犬と違って、こちらは主人に合わせて寄り添う忠犬と言った格好である。夕立にも、久しく会っていない。彼女は元気か尋ねると、相変わらずの大活躍だという。
「一週間前なんか、敵の重巡を魚雷で沈めていたんだよ」
 時雨は戦友の様子を聞かれ、生き生きとして話していた。途端、彼女はしまった、という顔をする。私にはその時の記憶がないのである。
「ねぇ……時雨、私、変なことを聞くようなんだけれど」
 私はここにどのくらいいるのかしら、と聞く。時雨は、提督が前線に戻るのを認めた日さ、と応じるが、それは私の聞きたかった答えではなかった。私が聞きたかったのは。
 いつまでの話ではなくて。
 いつからの話――なのだ。
 もっとも、賢しい時雨のこと、それは狙ってはぐらかしたのだろう。私は質問を変えて、別のところからアプローチをかけてみる。夕立
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