捕食者VS獲物達
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士としての吟じも容赦の欠片も無い、アルティメギルから見れば恥じるべき行動だ。
(テイルブルーでさえ名乗りを上げるという、戦士としての一応の礼儀は持っていた。しかしこの少女はっ……飢え狂った猛獣と同じ、獲物を喰らうという行動を取るのみ! 単純な暴力に走る蛮族よか此方の方が何と恐ろしき事か!!)
だがもうゴリラギルディには、逆上の種ともなりかねない罵倒や誇りを汚した者への侮蔑の視線を向ける事はおろか、心の中で相手を蔑む余裕をも無い。
「己を戒めねばならぬ事になるが……もはや矜持に拘ってはいられん!! 全身全霊を持って、かの捕食者を仕留めるのみよっ!!」
ゴリラギルディはそういうと右手で左肩を強く掴み、プロレスでいうラリアットの構えを取った。ゴリラギルディが息を大きく吸い込んだ瞬間、彼の腕の筋肉が一段盛り上がり、鋼の如き光沢を纏う。
「我が腕属性への情熱は何者にも汚せはしない!! 滑らかなシルクを思わせる肌の様に、空気の抵抗をも最小限にとどめ、触る事さえためらわれる造形美を誇る腕を体現し、相手の攻撃を受けども決して傷つく事の無い、至高の力を携えたこの腕をくらい果てるがいいっ!!」
ゴリラギルディは地面を組み砕く程の怪力を持って踏み込み、恐るべき反応で体を捩じって目の前へ迫っていた少女へと、悔しいかな一種の造形美とも捉えられるそのラリアットを思いっきりぶち込んでいった。
重く鈍い鋼鉄同士がぶつかったが如き、高らかに上がろうとも綺麗とはいえぬ轟音が、戦闘員も居なくなり二人のみになった採掘場近くの森林に鳴り響く。
猛烈に迫る衝撃波が木々を叩き、数秒間嵐が来たかのような様相を辺りに展開した。
視界を遮るもうもうと上がる土煙がはれた時、ゴリラギルディはその眼にしかと映した……
「そんな……左手、では無く右手で受け止めただとぉ!?」
「……」
―――武装された主戦力であろう“左手”を使わず、僅かに前傾姿勢を取って甲殻以外はそこらの少女と太さが殆ど変わらないその“右手”で、易々と受け止めてしまっている光景を。
一体どれだけの握力で掴んでいるのか少女の掴んでいる地点から、ゴリラギルディの鋼を超える硬度を持つ腕に罅入っている。
しかもゴリラルディが力ずくで振り払おうにも、震えるだけで振りほどく事が出来ない。鎧という表現が似合う筋肉を持つ怪人、その全身の筋力を爆発させたゴリラギルディの怪力ラリアットを、この少女は片手で超えるというのか。
「……ハッ!!」
「ぬぅっ!?」
少女が気合い一発息を吐くと、左手の生物感のある装甲がバクン! と三方から若干せり上がり、獣の唸り声にも似た音が聞こえ始める。
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