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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(前篇) 〜
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真の狙いはヴァレンシュタインの謀殺、侯爵夫人とコルプト子爵は利用されただけとなるが……。
「間違いないのか」
「間違いありません」
その言葉にもう一度唸り声が出た。思わず“信じられん”と声に出していた。

「その噂だがミューゼル大将の指示によるものと思うか、それともロイエンタール少将の独断だと思うか、卿らは如何考えている」
もう少しで卿と少佐に問い掛けるところだった。多少はヘルトリングの面子も立ててやらんと。それにシュミードリン少佐の立場もある、上官の顔を潰しては後々やり辛かろう。……なんで私がそんな事を心配しなければならんのだ! やはりヘルトリングは異動だ。上官に不自由な思いをさせる、その一点だけでも正当な異動の理由になる!

シュミードリン少佐がヘルトリングに視線を向けた。ヘルトリングの立場を慮っての事か。多少は話に参加させないと拙いという事だな。
「ミューゼル大将の指示によるものと判断しています」
「情報部長、卿がそう判断した理由は」
多少声を厳しくした。如何する? 少佐に振るか、それとも自分で答えるか。

「噂が流れる前ですがヴァレンシュタイン中将がミューゼル大将の司令部を訪ねているそうです」
「それで?」
自分で答えたか、少しはまともな所も有るようだな、褒めてやろう。だが後を続けられるかな?

「事はグリューネワルト伯爵夫人の安全に関わりますから突き詰めればミューゼル大将の将来にも関わります。おそらくは事前に噂を流す事の了承を取ろうとした、そういう事では有りますまいか。或いはこの一件は自分とリヒテンラーデ侯で片付ける、だから関わるなと釘を刺したとも取れます。変に介入され混乱するのを恐れた……」

そんなところだろうな、合格点をやるか。いや、待て。
「なるほど、それで」
「もしミューゼル大将がそれに同意したとするとロイエンタール少将はミューゼル大将、ヴァレンシュタイン中将の二人を敵に回す事になります。貴族達がロイエンタール少将、ミッターマイヤー少将に面白く無い感情を持っている今、そのような事をするでしょうか?」
取り敢えず次の人事異動での転出は無しとしよう、もう少し様子を見るか。

「すれば味方が居なくなるな、一少将の身では生き残れん。となるとミューゼルは一旦ヴァレンシュタインの要請を受け入れた後、それを反故にした。ロイエンタールに噂を捻じ曲げるように命じた、そんなところか」
「おそらくは」
ヘルトリングが重々しく頷いた。少し演技過剰だ、上司の前ではもう少し控えめにしろ。シュミードリンは小さく頷くだけだったぞ。

「ヴァレンシュタインはその事を知っていると思うか?」
此処が一番肝心なところだ、何処まで調べた?
「シュミードリン少佐の調べによればヴァレンシュタイン中将は知っているとの事です。そ
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