第五十六話 別れ2
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倒れたアクセルにエックス達が駆け寄ったのは、それから間もなくであったが、命の灯火がもうじき尽きようとしているアクセルにとっては随分長い時間だと感じられた。
エックス「アクセル…」
呼び掛ける声の優しさに、アクセルは涙が出そうになる。
身体は言うことを利かなかった。
全身の力が抜けてしまっている。
丁度寝起きの怠さに似ているが、現実は正反対であった。
これは眠りにつく倦怠感。
眠りとはすなわち、“死”を意味している。
もう1人の自分は、まだ存在している。
アクセル「は、は……まだまだだね、エックス…」
口をつく言葉が皮肉にしかならない。
本来の自分は自分より遥かに残酷で皮肉屋であった。
彼の影響がまだアクセルに残っていた。
アクセル「あんたなんか、殺す価値もないよ…こんな…イレギュラーに、躊躇っちゃってさ…」
ルイン「……アクセル、喋らないで」
ルインが悲しみを湛えた声で言う。
アクセルは微笑む。
最期の最期なのに、名前を呼ばれて嬉しかった。
彼を呼ぶ者はもう1人いた。
彼を撃ち抜いたルナである。
ルナ「アクセル…ごめん…ごめんなさい…」
アクセル「ルナ…」
謝り続ける彼女にアクセルは、穏やかな眼差しで見つめる。
アクセル「やっと思い出した…。あの時、皆を忘れて…あんなに傷つけた。あんなに酷いことをした…ごめんね…皆、ごめん…」
アクセルの謝罪に首を振る、ルナに、アクセルは遠い目をする。
星がとても綺麗で冴え冴えとしていた。
氷のように冷たかった。
自分の身体が氷のように冷たくなっていくのを感じる。
目が霞み出す。
アイセンサーにノイズが生じて、砂嵐を広げていく。
遠ざかっていく目の前に、震えながら手を伸ばした。
手は、ルナの前に差し出された。
アクセルは笑いながら最期の言葉を紡ぐ。
もし再び目覚めることがあったら、その時はルナの名前を呼ぶ。
覚えている。
忘れたりなんかしない。
絶対に覚えている。
そう誓って。
アクセル「今度は忘れないよ…きっと……」
アクセルの手が、ぱたりと落ちた。
ルナ「アクセル!!」
ルイン「嘘…」
ゼロ「…………」
エックス「くそ…っ!!」
エックスが拳を地面に叩きつけた。
仲間を救えなかった己の無力さに腹が立った。
その時、エックス達の聴覚器に何故か酷く懐かしく感じられる声が届いた。
アイリス『エックス!!ルイン!!ゼロ!!ルナ!!状況は…アクセルは…?』
通信機越しに尋ねてくるアイリスに、ゼロは少しの間を置いて静かに答えた。
ゼロ「こちらゼロ…………アクセルは………俺達が処分した。」
アイリス『っ…そう』
一瞬息が詰まったような音がし
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