トワノクウ
第二十夜 禁断の知恵の実、ひとつ(一)
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へえ。よく分かったね」
露草と空五倍子が揃ってこちらのやりとりに怪訝を呈す。
「露草」
「あ?」
「お前のことだ、どうせあの町人の顔を見に行くんだろう。だったらついでに彼女を銀朱に会わせてやれ」
銀朱、と聞いてくうの中に戦慄の記憶が蘇る。
第一印象を裏切る、苛烈なまでに使命に殉じている男の姫巫女。潤を変えた人。くうを一度、殺した、――
「大丈夫だよ」
両手を強く握って震えを堪えていたくうは、梵天の言葉にはっとする。
「名前が同じなだけで坂守神社の姫巫女とは別人だ。怖がらなくていい」
「ほんとに……?」
「ああ」
くうの体からどっと緊張が抜けた。自分で思う以上に二度目の死のトラウマは大きかったらしい。
全身を血でマーカーできるくらいの傷。鉛玉に開けられた無数の穴と、眼球の奥や胃の中まで満ちた鉄の味。思い出すだけで吐きそうだ。
それに、潤が号令を下したことももちろんだが――あの時の銀朱は心から怖かった。くうを人間と見なすことをやめた右目が剣山のように刺さった。
「おい梵天、銀朱はまだ……」
「まだ、だからこそ会わせる意味があるんだよ」
露草は渋面を作った。「次に与える実がよりによってあれ≠チてわけかよ。趣味が悪いとこだけ白緑に似てきやがって」
「諸国漫遊の間に少しは諧謔を身につけたかい」
このまま空気が冷え込むのは堪りかねた。くうは疑問解消のためも含めて声を上げる。
「その銀朱≠ウんはどんな方なんですか?」
梵天はどこか意地の悪い笑みを向けた。
「君と同じで妖を己の体にしている人間だ。色々と学ぶ所も多いと思うよ」
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