一歩踏み出し踏み外す
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クハハハ! 違えねぇなソリャ!!』
イヤミとして言ったつもりが、如何やら本人にとっては気のきいたジョークとしか受け取られず、ラースの笑い声を聞きながら瀧馬は溜息を吐いた。
ここ二日で溜息を吐きまくりで、幸せが逃げていかないか心配である。
「まあいいか……それでこれからの方針だが……」
『俺がエレメリアンの気配を察知シテ、ワープ機能を使って即座に移動。そんで変態共を部下ともども根こそぎ喰らい尽くして終了。これでいいダロ』
「まあそうか、それぐらいだな」
『クハハ! simple is bestヨ!』
「……意外と英語流暢だなお前」
単純な行動しかできないのも事実なので、瀧馬も納得しかけて話を一旦切ろうとして……ある事に気が付いてもう一度ラースに話しかけた。
「おいラース」
『何ダ? 相棒』
「……このままの姿で出ていったら、テイルレッド目当てに出ている記者達にバッチリ取られないか? 正体ばれたら簡単に行動できないぞ」
幾らテイルレッドばかり映しているからと言って、そこにばかりかまけて瀧馬を居ないが如く無視するなぞ、この狂いはじめた街だとも流石に有り得ない。
更に趣味趣向種のエレメリアンで作られた組織、アルティメギルの連中も、自分に牙をむく存在を放っておく筈がないだろう。
その瀧馬の質問に、ラースは軽い調子で答えた。
『なーに大丈夫ダ。そのままの姿で出させる訳無いダロ。ちゃんとそこの対策もしてあるッテ、安心しな相棒』
やはりと言うべきか何の対策も無く戦場へ放り出そうとしていた訳では無かった模様。ラース自身にとっての生命線でもあるから、ぞんざいに扱う可能性は確かに低いし、世間のテイルレッド馬鹿っぷりから気を抜きそうにもなるが、用心するに越した事は無い筈だ。
『サーテ、今後の事も決まった事ダシ、今日はもう草臥れちまッタ。もっと詳しい事は明日にするとシテ、テレビでも見ねエカ? 相棒ヨォ』
「みたいのか?」
『犬っころの時はとんと娯楽には無縁デナ、出来るだけ楽しみたいんダッテ!』
「……仮にも命の危機から脱していない奴が言う台詞じゃないな」
『別にいいだろガヨ。今日明日で死ぬ訳でナシ』
「はいはい、……よっと」
確かにすぐに終わりが来るのではないのだから、ずっと気を張り詰めていても仕方がなかろうと瀧馬も思い、少しでも気晴らしになればとテレビを付ける。電気自体は普通に通っており、生活する分には奥の部屋か二階を利用すればいいので、大きな問題はなさそうだ。
しかしながらこの時瀧馬は、余りにも衝撃的な事が続いて所為で忘れていた。
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