第2話 エージェント
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冷たい目線で松見を見据えたまま頷いた。
「はい。……その為の私ですから。」
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「はい、これでよし、と。」
色白、そして愛くるしい童顔。華奢で小柄なその見た目は、迷彩服を着ていなければとても軍属なんかには思われない。ニコリと笑ったその顔の可愛さは、民族を超えた魅力を持っているのだろう。治療を受けていた現地人の患者は、どこで覚えたのだろう、日本式のお辞儀をして病室を出て行った。
「……さすが、今日も大人気ですな」
手伝いをしている、看護師資格持ちの兵士が笑っていた。このとても可愛らしい軍医は鹿本絵里中尉。バルスタン基地の女神様なんかと噂されている。今やってるのは、ルクハイド市民病院への医療支援。だいたい、日本から送られてくる医薬品や医療機器の使い方のレクチャーだが、余った時間にはこうやって、医師不足で空いている診察室を使って診療も行っている。レアな事もあってか、この日は鹿本の診察室に行列ができていた。
「……確かに、自分を可愛く見せる笑い方も仕草も分かっている、そういう印象を受けますね」
診察室の奥に座って、カルテ整理を手伝いながらその様子を見ていた遠沢が、こちらは愛想の欠片もない顔でそう呟いた。いきなりポッとやってきて、自分たちの女神様を揶揄した民間人に、看護師兵士はギロ、と威圧するような視線を送る。遠沢はそんな視線を、そのまま表情をピクリともさせずに見返した。大の男の睨みに全く動じない辺り、見た目の雰囲気通り冷静、もはや感情が無いのかと思わせるレベルである。
「あ、バレちゃいました?男の人って、本当に単純ですから、ちょっと可愛く見せるだけでイチコロなんですよ、特に陸軍軍人みたいな男所帯の方は☆」
視線がぶつかる兵士と遠沢の間で、鹿本は微笑みを絶やすことなく、悪戯っぽく言った。これには兵士はズッコけて、遠沢の表情も少しばかりは柔らかくなった(ように見えるが、そもそも無表情なので気のせいかもしれない)
「住民からの評判は、今の所はまずまずに見えます。陸軍の方々の努力の成果でしょう。これから私はこの街に滞在して、相談役として皆様の活動の助けになるよう更に情報を集めたいと思います」
「女性1人でこの街に残るのですか?お気をつけて下さい、そう治安も良くありませんし、外国人ということで目立ってしまいますから。」
気遣う鹿本に、遠沢は笑みを見せた。口元だけの、何ともとってつけたような笑みだった。
「……ご心配して頂き誠に恐縮です。でも大丈夫、私、こう見えて結構修羅場をくぐっていますから」
「まあ。それは、頼もしいですね。」
不恰好な笑みの遠沢と違い、鹿本の笑顔は実に良い笑顔で、そして、実
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