第2話 エージェント
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はずの重岡にも遠慮なく意見を言っていた。
「こまけえ事言うなよ〜。どうせ日本語なんて分からねえんだから愚痴の一つや二つくらい言わせろって〜」
「ダメです。まったく、仮にも小隊長なんですからもう少し自覚を持って振舞って下さいよ」
甘える子どもをたしなめる大人、といった風情で微笑ましくもあるが、黒く日焼けした男同士のやり取りでは、滑稽さが勝る。彼らは今、地元住民の理解を得るための人道支援……というより、バルスタン鉱区落札の時点でこれらの支援は約束に含まれていたらしいが……の一環として、荒れ放題の道路の整備に励んでいる。重岡は土方みたいだと文句を言っているが、副官の中埜としてみれば、軍人らしいこと……つまり、鉄砲持ってドンパチ……するよりは余程安全で、平和の証拠で結構だと思っていた。実際最初ここにやってきた時は、今も傍に置いてある小銃を撃つ機会もあった。
「お、あれ陸軍のジープじゃねえか。どうしたんだ?予定に無いぞ?」
「司令が言っていた、NPOのエージェントがやってきたんじゃないですか?我々軍人よりも、より柔軟に地元住民の要望を吸い上げる事ができるし、そういう折衝のプロを呼んだと聞きますよ」
重岡が遠目に見つけた自軍のジープに対して、中埜が説明を加えた。近々、基地の規模を拡大し、ルクハイドの支援もそれに伴って強化するという話は中埜も聞いていた。これからは更なる地元住民からの理解と協力が必要になるというのは、それなりには納得できる話だし、その為に人材を派遣するというのも、分からない話ではなかった。
「カーッ!別に良いよ、土人の希望なんざ聞かなくても!どうせまたつまらねえ仕事が増えるだけだろ!」
「……また土人って言った」
どうやら、重岡には分からない話だったらしい。中埜はため息をつきながら、日の丸のついたジープを見送った。
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その数時間前−−
「基地への攻撃は、いくら要塞化した所で、脅威である事には変わりありません。できる事ならば、未然に防ぎたいというのが本音です」
「……その為には、住民の支持を取り付けて、日本軍への攻撃の動機を失わせるというのが肝要です。また、住民の支持を取り付けておくことは、過激派の攻撃、またはその可能性などの情報が手に入りやすくなる事にもつながりますからね。」
バルスタン基地の司令室には松見少佐と、仲島が運んできたエージェントが居た。室内ではエージェントはヘジャブを外し、ショートカットの黒髪を晒していた。しきりに頭に手をやる辺り、ヘジャブを窮屈に感じているようだ。
「はい、その通りです。その為のお手伝いを遠沢さん、あなたにお願いしたいのです。」
遠沢と呼ばれた女はゆっくりと、
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