序章
0話 絶望の産声
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この世界で生き残る方法は二つ。自分のステータスをひたすら強化するか、あるいはダメージが発生しないエリアに閉じこもるか……このどちらかだ。前者には戦闘で死亡するというリスクがついて回るが、そういう人間がいないとこの世界から誰も脱出できない。後者は恐らく安全だろう。リスクを負わない。だけど、全員がそうなれば俺達は死ぬまでずっと植物状態だ」
「でも、なにも燐ちゃんがやらなくたって………」
こんな時でも庇ってくれる友人を、俺はぞんざいに扱っていたのか。
我ながら人を見る目がないと落胆しつつ、それでも俺は贖罪を為さねばならない。
……しかし、憔悴した心が命じた発言は、決意表明ではなかった。
「………俺がSAOのベータテスターに選ばれてから、あまりヒヨリとも話さなくなってたよな」
懺悔という名の責任逃避。
感情のダムを決壊させるほどの罪悪感と悔恨の念が、許されないと解っていながらも俺に懺悔を語らせていた。そうでもしないと、こうしているうちにも染み出してくる弱い感情に俺自身が押し潰されてしまう気がしたから。
「クラスが離れてても、休み時間にはいつも会いに来てくれてさ……なのにうざがって、遠ざけて………こんな大事な友達がいたのに気付かないで………それも、ヒヨリまで巻き込んでこんなことになって………こんなんじゃ、俺が俺を許せない。うまく言えないけど、これ以上ヒヨリを危険な目に遭わせられない」
まとまりのない、感情をそのまま言葉にしたような、謝罪とも意思表明ともとれない何かを一頻り言い終える頃には、街の出口である開きっぱなしの門まで辿り着いていた。
「………じゃあな。運動音痴なのに、なかなかどうして筋は良かったよ」
もう、この手を握っているわけにもいかない。
………たとえ、この先で死んだとしても、ヒヨリが元の世界に戻るための足掛かりになれるなら……
「だめ………一人でなんて、行かせない………」
解いた手に、再び手が結ばれた。
今度は俺が握るのではなく、ヒヨリの手が握る形で。
リアルでは考えられないくらい、驚くほど力強く。
「私、言ったよね………自分で考えたって。私だって、いつまでも子供じゃないんだよ? 燐ちゃんと同い年なんだよ?」
レベルは全く同じ。互いに一のままだが、筋力の数値は男女のアバターで反映に一切の差はない。振り切ろうにも膠着してしまうだろうが、そんなことは所詮言い訳だ。まず振り払うという行動に及べなかった。
ヒヨリとの筋力勝負の前に、既に心が揺らいでしまっていて、完全に動けなかった。
ヒヨリの顔を見る事すら、今の泣きかけの顔を見せる事すらできなかった。
「それにほら、私一
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