序章
0話 絶望の産声
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
AOでの出来事だった。
実を言うと、その時点でヒヨリは既に二回HPが全損している。その頃はまだ《始まりの街》の《黒鉄宮》という施設で復活し、そこからまたスタート出来た。かくいう俺だってベータテスト時には何度、黒鉄宮からはじまりの街に戻ったことか。だが、これからは……
「……それでは最後に、諸君の持物に私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」
その言葉に、プレイヤーは一斉にメニューを開き、持物を確認した。
そこには先程までの戦闘で獲得したアイテムの他に一つ、見慣れないアイテムが存在していた。
「手鏡……?」
ひとまず、どんなものなのかを確認すべくオブジェクト化を行う。
現れたのは、手のひらに収まるサイズの文字通りの手鏡だった。鏡面には、リアルのそれと代わり映えのしない、手間を惜しんでキャリブレーション反映で再現された俺自身が映り込んでいるだけだった。
「きゃっ!?」
鏡を覗いたヒヨリは短い悲鳴の直後に、青い光の柱に飲まれた。というより、俺を除いたほぼ全てのプレイヤーが光に飲み込まれる。
本来、街中ではダメージは発生しないが、今までの常識がどこまで通じるかも未知数だ。もしこれがダメージ判定のあるエフェクトだとしたら……
――――そう思うと、身体は咄嗟に動いていた。
このエフェクトから引きずり出す!
覚悟を決め、渾身の力で腕を伸ばす。とにかくヒヨリを引きずり出す……ヒヨリだけは……!
「おぉぉぉぉ!!」
エフェクトから覗く肘に狙いを定め、掴み取る。
脳の裏側にこびりつく罪悪感に苛まれながら、祈るような気持ちを込めて引き寄せる。
「り、燐ちゃん………?」
「ヒヨリ………お前、アバターが………」
「アバター? ………って、え………あれ?………私………」
手鏡を再び見たヒヨリは、あまりの出来事に絶句する。
長身で銀の長髪で切れ長の青い瞳のクールビューティは既になく、代わりに身長が百五十センチメートルを僅かに超えるくらいの黒髪の少女が、いつも見慣れた《浅羽日和》がそこにいた。どうやら、手鏡なるアイテムはアバターのデザインを測定数値反映機能で上書きするものらしい。
ともあれアバターがリアルの姿に変更された以外、何も異常は見受けられないようだ。
周囲にあった美男美女の群集は現実味のある顔つきに変わり、心なしか男女比率も逆転している気がした。性別や年齢を偽っていたプレイヤーやその被害者間での衝突と思われる諍いが耳に入る。黒髪長身が小柄に、赤髪も野武士面になっていたが、この際意識から切り離すこととした。
「諸君は今、なぜと思っているだろう。な
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ