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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
序章
0話 絶望の産声
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AOでの出来事だった。
 実を言うと、その時点でヒヨリは既に二回HPが全損している。その頃はまだ《始まりの街》の《黒鉄宮》という施設で復活し、そこからまたスタート出来た。かくいう俺だってベータテスト時には何度、黒鉄宮からはじまりの街に戻ったことか。だが、これからは……
 

「……それでは最後に、諸君の持物(アイテムストレージ)に私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」


 その言葉に、プレイヤーは一斉にメニューを開き、持物を確認した。
 そこには先程までの戦闘で獲得したアイテムの他に一つ、見慣れないアイテムが存在していた。


「手鏡……?」


 ひとまず、どんなものなのかを確認すべくオブジェクト化を行う。
 現れたのは、手のひらに収まるサイズの文字通りの手鏡だった。鏡面には、リアルのそれと代わり映えのしない、手間を惜しんでキャリブレーション反映で再現された俺自身が映り込んでいるだけだった。


「きゃっ!?」


 鏡を覗いたヒヨリは短い悲鳴の直後に、青い光の柱に飲まれた。というより、俺を除いたほぼ全てのプレイヤーが光に飲み込まれる。
 本来、街中ではダメージは発生しないが、今までの常識がどこまで通じるかも未知数だ。もしこれがダメージ判定のあるエフェクトだとしたら……

――――そう思うと、身体は咄嗟に動いていた。

 このエフェクトから引きずり出す!
 覚悟を決め、渾身の力で腕を伸ばす。とにかくヒヨリを引きずり出す……ヒヨリだけは……!


「おぉぉぉぉ!!」


 エフェクトから覗く肘に狙いを定め、掴み取る。
 脳の裏側にこびりつく罪悪感に苛まれながら、祈るような気持ちを込めて引き寄せる。


「り、燐ちゃん………?」
「ヒヨリ………お前、アバターが………」
「アバター? ………って、え………あれ?………私………」


 手鏡を再び見たヒヨリは、あまりの出来事に絶句する。

 長身で銀の長髪で切れ長の青い瞳のクールビューティは既になく、代わりに身長が百五十センチメートルを僅かに超えるくらいの黒髪の少女が、いつも見慣れた《浅羽日和(現実のヒヨリ)》がそこにいた。どうやら、手鏡なるアイテムはアバターのデザインを測定数値反映機能で上書きするものらしい。
 ともあれアバターがリアルの姿に変更された以外、何も異常は見受けられないようだ。
 周囲にあった美男美女の群集は現実味のある顔つきに変わり、心なしか男女比率も逆転している気がした。性別や年齢を偽っていたプレイヤーやその被害者間での衝突と思われる諍いが耳に入る。黒髪長身が小柄に、赤髪も野武士面になっていたが、この際意識から切り離すこととした。



「諸君は今、なぜと思っているだろう。な
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