第百八十六話 国崩しその六
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「まだな」
「左様ですか」
「その者はこれから探す。しかしこれだけ大掛かりな戦を仕掛けるなぞ」
どういった者かというと。
「公方様ではないわ」
「あの方の文は確かに受け取りましたが」
顕如も言う。
「拙僧や灰色の門徒達は動かせても」
「闇の服の者達はじゃな」
「何十万もの兵をあちこちの国で動かすなぞ」
義昭では、というのだ。
「とても」
「そうじゃな。公方様でもない」
「左様かと」
「他の大名とも考えられるが」
その彼等もだった、考えていくと。
「あまりにも大きい、やったことがな」
「それが過ぎますか」
「本願寺程の力があればと思ったが」
それこそその力は武田や上杉も凌ぐ、それだけの門徒の数がいるのだ。確かに本願寺ならそれだけの力はあったが。
「違うな」
「拙僧もここまで来て嘘は申しませぬ」
「わかる、それもな」
信長は顕如の目を見た、そして他の高僧や雑賀達も。彼等は覚悟はしているがそれでもだった、目の色は毅然としたものだった。
「嘘ではないこともな」
「では」
「この度のことは何者かわからぬが非常に大きな力を持ちじゃ」
そしてというのだ。
「どの寺社でも大名でもなく」
「公方様でもないと」
「その者が我等を争わせた」
そうであったというのだ。
「我等はその者達にしれやられたのじゃ」
「そうでしたか」
「それ故にじゃ」
だからだというのだ。
「貴殿の責ではない、だからじゃ」
「拙僧は」
「罪に問わぬ」
こう言うのだった。
「無論門徒達にも僧達にもな」
「そうして頂けますか」
「しかし当家の政には従ってもらう」
顕如も誰も責は問わない、しかしというのだ。
「よいな、それは」
「織田殿の言われるままに」
「それでは石山からは退いてもらい」
そしてだった。
「全ての武具と荘園を差し出してもらう、よいな」
「畏まりました」
「一揆も禁じる」
これもだった。
「そうせずともよい政をする。何なら直訴もせよ」
「直訴もとは」
「そうしてもよい」
信長自身にというのだ。
「わしは常に民の為の政をするつもりじゃからな」
「だからですか」
「そうじゃ。言いたいことがあればな」
それで、というのだ。
「民が言えばよい」
「そこまでお考えとは」
顕如は唸る様に言った、そしてだった。
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