第百八十六話 国崩しその三
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「拙僧としてはな」
「それでは」
「今にも織田家の攻めがはじまろう」
顕如は鋭い目になり述べた。
「すぐに主な僧達を集める、よいな」
「そして話をして」
「そのうえで決める」
織田家に降ることをというのだ。
「わかったな」
「さすれば」
こうしてだった、一向宗の主な僧侶達が顕如の前に集められた、無論雑賀もいる。そのうえで話をしようとしたところでだった。
信長は全軍にだ、こう命じた。
「では今よりじゃ」
「大筒で、ですな」
「石山を攻めまするな」
「その壁を狙え」
堀の向こうにあるそこをというのだ。
「それだけでよい」
「堀の向こうの壁をですか」
「そこをですか」
「そうじゃ、撃て」
そしてというのだ。
「それで終わるわ」
「本願寺との戦も」
「それも」
「そうじゃ、これで終わる」
砲で撃つだけでというのだ。
「ではよいな」
「はい、わかり申した」
「それでは」
家臣達も応えてだ、そしてだった。
大砲での砲撃をはじめた、そうしてだった。
石山を攻めはじめた、石山の堀は確かに広かった。だが砲撃はその堀さえも越えてそのうえで。
壁を撃ち砕いていった、それを見て門徒達も僧侶達も慌てふためいた、このことはすぐに顕如にも伝えられた。
顕如は丁渡主な僧侶と雑賀達を己の前に集めたところだった、そこでその報を聞いて報を届けた僧に問うた。
「左様か、大筒でか」
「はい、壁を壊してきました」
「それではじゃな」
「門も櫓もです」
その砲撃によってというのだ。
「壊されるのは時間の問題です」
「門も櫓もなくてはな」
どうなるかは言うまでもなかった、最早。
そのことを聞いてだ、顕如は決意した。そのうえで周りの者達に告げた。
「降るぞ」
「そうされますか」
「ここは」
「最早戦にはならぬ」
今の本願寺では、というのだ。
「だからじゃ」
「織田家に降り、ですか」
「門徒達の命を」
「拙僧が出ればな」
つまりだ、顕如の首を差し出せばというのだ。
「織田家もそれ以上は求めまい。おそらくここから去ることにはなるが」
「石山からはですか」
「去ることになりますか」
「うむ、そうなる」
それはというのだ。
「しかし門徒達はな」
「助かりますか」
「皆」
「拙僧が行けば皆助かる」
「しかしそれは」
「法主様が」
「よい」
顕如の毅然とした言葉は変わらない、今も。
「息子達もおる、だからな」
「では」
「ここは」
「織田信長に使者を送れ」
そしてというのだ。
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