第一の晩 (2)
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騒ぐ大人たちに手紙を奪われた。
封筒も封蝋も、金蔵が使用する物と同じであると確認され、筆跡は違うと分かり、大人たちの顔色はしだいに悪くなる。
「この、客人てのは何なんや。蔵臼義兄さんは知ってはるんでっか?」
「分からん。だが、これは早急に親父殿に聞かねばなるまい!」
大人たちは食堂を飛び出して行く。出遅れた楼座と子供たちと使用人が取り残された。静かになった食堂は、その広さ故にガランとして更なる沈黙を醸し出している。
楼座は、戦人たちにゲストハウスへ戻るように告げ、他の大人たちの許へと向かった。
ゲストハウスへの向かう道。
浮き足立って歩く真里亞に、不思議そうに戦人が声をかけた。
「どうしたんだよ。やけにご機嫌だな」
「まだ内緒。明日になったら分かるよ! きっひひひひ...」
「へ、へえ...」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
10月5日。
外は相も変わらず曇天。やや小降りとはいえ、雨は止む気配さえない。そんな早朝の風景を眺めながら、夏妃は溜め息を吐いた。
廊下に出て、違和感を感じ取る。
いくら早朝とはいえ、静か過ぎた。使用人たちは何をしているのか...。夏妃の眉間に深いシワが刻まれる。
「まったく......」
昨夜の手紙の件で寝不足気味。無理矢理付き合わされた使用人がいたのかもしれない。だが、そんなことは関係なく突っついてくる者もいる。この親族会議の日は、いつも以上に気が抜けないというのに...。
「おはようございます、奥様」
「源次ですか...。何かあったのですか? 他の使用人たちはどうしたのです?」
「それが......どこにも姿が見えません。旦那様と南條先生もいらっしゃいませんでした」
「主人もですか!?」
こんな早朝からどこに?
夏妃の疑問に答えるように、源次は屋敷中を見回ったことを告げる。そして、礼拝堂に不思議な魔法陣が描かれていたことも...。
「あの礼拝堂は、お義父様が造らせた大切なものと聞いています。誰の仕業なのかは分かりませんが、これはお義父様への侮辱に値します。
それで...中は確認したのですか?」
「礼拝堂には鍵が掛かっておりましたので、使用人室のキーボックスを確認したところ、このような物が」
「これは!?」
懐から取り出されたのは、昨夜の手紙と同じ物だった。違うのは手紙の内容。
『我、少女の籠の底にて眠る。』
「何ですかこれは。少女とは、誰のことです?」
「少女なら、朱志香ちゃんか真里亞ちゃんじゃなぁい?」
癖のある話し方、声。夏妃の頭痛が酷くなる原因の一つ。絵羽の嫌味混じりの挨拶を受け流
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