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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
宵の口
07話 隻腕の錬鉄者
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もしれないね?』
『あらあら、御冗談が過ぎますわ閣下……今巴(いまともえ)と云われる私、これでも結構言い寄られていますのに?』
『それは初耳だよ。後で真壁に詳しく聞いておくとしよう。』

『是非とも。』

 したり笑みを交わしたところで、内部を刳られる大地の悲鳴―――地中を掘り進むBETAが地上へと顔を出す予兆が近づいてくる。
 そして、大地の震えは最高潮に達し、やがて臨界を突破する。

 吹き飛ぶ、崩落する地面。荒野に穿たれた大穴からまるで、巣から一斉に飛び出す蟻の大群のように饕餮の化身が如き、すべてを食らいつくす異形が無数に吐き出された。


『――――では、参ろうか。皆の者続けぇッッ!!!!』

 蒼き将の号令、蒼き雷神がその紅眼を光らせ、跳躍ユニットを咆哮させて疾走した。
 それに続く大隊の武御雷たち―――雷神にして剣神の名を冠する公武合体を体現する機械仕掛けの鎧武者の軍勢が戦場を駆け抜けた。





 翌日―――帝国軍調布基地


「状況終了、ホワイトファングス残存機のハイヴより撤退を確認。ヴォールク19終了します。」

 シミュレーターによる仮想ハイヴ攻略を管制する指揮所。
 オペレーターたちが座席にて管制を行う中、脚立する一人の男の姿があった。

 斯衛の中でも最も異色の色―――本来なら日本帝国の全権を日本帝国皇帝に代わり執り行う政威大将軍と成りうる人間を排出する五大武家、五摂家に属する者のみに許された青を纏う男だった。

 その鍛精な顔立ちは美形という訳ではないが、濃密な修練を積み重ねた者のみが持ちうる精錬された空気を纏っている。
 だが、その顔面の右半分に走る大きな傷、右目を大きく裂く傷痕が生々しく残っており、鋭い眼光と相成りまるで、無理やり鞘に納められた妖刀を連想させる。

 そして―――彼には右腕が無かった。


「諸君、ご苦労だった。シミューター上とはいえハイヴ攻略が成らなかったのは遺憾の極みではあるがお蔭で有意義なデータが取れた。各自ゆるりと英気を養うといい。」

 指揮所でインカムを叩き、シミュレーター試験を終えたホワイトファング中隊を慰撫した斑鳩 忠亮はその身を翻し、管制室から立ち去るのだった――――。

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