平穏無き世界ようこそ
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「う……っ」
吹きつける冷たい風で、瀧馬は目を覚ました。痛む頭へと手をやり、押さえながら自然と湧いてくるおぼろげな記憶を思い返す。
「化け物は……あれは……夢、だったのか……?」
余りにもリアルな夢だったからか、切り飛ばされた右足や喰い千切られたと思わしき左半身に、何処となく違和感があるのを瀧馬は感じていた。
痛みすら、まだ残っているかのように、体も少し軋む。
まあそうはいえども、やはり夢ではあったのか右足はあるし、生きているのだから左半身だって勿論存在する。
戦慄と恐怖を叩きつけてきた夢を見た理由を、テイルレッド教徒と言っても可笑しくは無い信仰者達の所為とするべく、またこみあげてきた怒りを理不尽ながらも押しつけ立ち上がろうとして……気が付いた。
「左側の……服が……ズボンの右膝下が、無い?」
そこでハッとなり周りを見渡す。そこにあったのは――――夢の中で見た、大惨事状態のリビングルームであった。
食器棚は中身ごと粉々になり、一部崩壊した二階部分は今だドアを潰している。
机は不気味なほどきれいに真っ二つで、電気機器の中ではテレビだけ唯一無事であり、MDプレイヤーは無残にも砕かれている。
そして、冷たい風に気が付いて振り向くと、そこには割れて形の整っていない大きな穴をあけたガラス窓があり、その下には尖ったガラスの破片が散らばっている。
「そん、な……一体、どういった……」
アレは夢じゃなかったのだろうか? だとすれば何故自分は生きているのか? 理解が追いつかず思考、行動共に凍りついてしまった。
これからの生活が難しくなるという事や、家に両親が返ってきた時の事なども、今の瀧馬には取るに足らない事。
それ以上の驚愕が、彼を包んでいるのだ。
家の中の惨状は夢のままハッキリと残されていて、夢の中で食われた場所の服が無く、その部分が若干違和感を残す。
そこの事から導き出される答えは、それこそたった一つだった。
(まさか……アレは夢じゃあなく……?)
『そウサ、あれは現実ダヨ、お前サン』
「!!」
夢の中でも聞いた奇妙な声が、彼に話しかけてきた。耳から入ってくるのとは明らかに違う、頭の中に直接響く奇妙な声は、瀧馬の驚愕なぞ知らんとばかりに話を続ける。
『正確に言うなラヨ、お前は死ぬ一歩手前で踏みとどまってたってぇ事なんダガ、ほっときゃその内死んでたって事実は覆せねェナ』
「……誰だ、どこにいる!?」
『どコォ?』
ニヤ〜ッ、という効果音と表情が容易に想像できてしまう声の後、謎の声の主は更に意味の分からな
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