第一章
str2『第一層の地で@』
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小さな、高めの声が、プレイヤーの口から洩れる。フードが少しずれて、中の素顔がほんのちょっとだけ、覗く。
その瞬間。
クロスは、このプレイヤーがなぜフードで顔を隠しているのか悟った。
プレイヤーは――――金色の髪の、少女だった。それに、一般的に《美少女》と呼ばれる類の。
「なるほど、確かに顔を隠した方が好都合そうだ……」
思わず感想が口を突いて出る。
それと同時に、少女が目を開き、クロスをその双眸に捉えて、その存在を認識し――――
「きゃぁぁぁぁ!?」
「うおぉぉ!?」
思いっきり、ぶん殴ってきた。
***
「……さっきは、その……ごめんなさい」
「いや……何故謝るんだ? 君を驚かせてしまったこちらの不注意だと思うが……」
迷宮区最寄りの、第一層で二番目に大きい街。名を、《トールバーナ》の宿屋の一つ、その一階に併設された居酒屋の一席で、クロスと少女は向かい合っていた。
少女は人目を避けるためなのか、街中だというのにもかかわらずフードを目深にかぶっていた。まぁ、先ほどちらりとだけ見た素顔ならば、この世界では相当話題になってしまうだろう。
SAOでは、現実世界の容姿に上書きされた際、同時に性別もリアルのそれと同期させられた。恐らく脳波で判別しているのだろう。そんな面倒なことをするなら、そもそもなぜ最初から性別変換禁止にしなかったのだろうか、と多少疑問に思わなくもないのだが。
とにかく、それ故に、購入者は重度のネットゲーマーが大半を占めるSAOには、女性プレイヤーが非常に少ない。加えて髪の色や髪型、目の色などのカスタマイズ可能要素を除いて、容姿は現実のものだ。美形となればさらに少ないだろう。
そんな中で美少女、しかも(恐らくだが)ソロとなれば、いろいろとしがらみも多いのだろう。
そんなことを考えていると、少女が再び口を開いた。
「とにかく、助けてくれてありがと」
「構わない」
素っ気なく答える。こう言うときは何か気の効いた事を言うべきなのだろうが、生憎クロスはこう言うときどう言えばいいのか知らない。相手の心情を理解するのが苦手なので、対人に不向きなのだ。
しかし少女は、そのクロスの態度に対して、くすり、と小さく笑った。
「なぜ笑う?」
「何でもないわ。変な人、と思って」
「変な人、か……そう、なのか?」
クロス自身は、自分が変人だとは思っていない。故に、何故『変な人』呼ばわりをされたのか真面目に考えていると、
「ますます変な人ね」
また少女が笑う。
「気に入ったわ。ね、あなた……ボス攻略には参加するの?」
「一応、そのつもりでいる」
アインクラ
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